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[ 科学技術・大学 ]
(2018/4/3 16:00)
ハッブル宇宙望遠鏡で2016年に撮影した約90億光年先の恒星(写真右下拡大図、矢印の先)。手前の銀河団(写真左)の重力がレンズの役割を果たし、11年の画像(写真右上)では見えなかった恒星が見えるようになった(NASA、ESA、P・ケリー氏提供、時事)
約90億光年も離れた恒星をハッブル宇宙望遠鏡で観測できたと、米カリフォルニア大や東京大、東北大などの国際研究チームが2日発表した。手前にある銀河団の強い重力がレンズの役割を果たし、最大で2000倍超も明るく見えた。
単独の恒星はこれまで1億光年以内しか観測できなかったが、重力レンズ効果で大幅に記録を更新したという。論文は英科学誌ネイチャー・アストロノミーに掲載される。
この恒星は質量が太陽より大きく、熱く明るいが、通常は遠過ぎて観測できない。今回は手前の銀河団に強い重力を持つ「暗黒物質」が分布している上、恒星からの光が望遠鏡に届く経路付近に、太陽くらいの別の星が入り込んだため、一時的にレンズ効果が増強された。2016年5月に最も明るくなってから急に暗くなり、「イカロス」と呼ばれている。
重力レンズ効果を持つ銀河団は、しし座の方向、約50億光年先にある。93億光年先で起きた超新星爆発が4重に見える画像が14年にハッブル宇宙望遠鏡で撮影されており、その後も観測を続ける過程でイカロスが見つかった。
大栗真宗・東大助教によると、今回の観測は暗黒物質の解明を目指す研究にも役立っている。暗黒物質は質量が太陽の数十倍あるブラックホールから構成されているとの説は、正しくないことが分かったという。(時事)
(2018/4/3 16:00)