[ オピニオン ]
(2018/5/18 05:00)
モノづくりを取り巻く環境が急速に変化している。中でも大きな潮流がIoT(モノのインターネット)や、3Dプリンターに代表されるモノづくりプロセスのデジタル化だ。残念ながら、この分野で日本が先行しているとは言い難い。国際競争をリードすべく、取り組みをより積極化する必要がある。
デジタルモノづくりのうち、ドイツの掲げるインダストリー4・0は、「サイバー・フィジカル・システム(CPS)」などトップダウン型のアプローチが特色。例えば、3次元CADや電子回路設計ソフトによるデジタルモデル(デジタルツイン)でシミュレーションを行い、プロセスの上流で不具合をいち早くつぶす仕掛けを持つ。
一方、日本政府の打ち出した「コネクテッドインダストリーズ」は、「カイゼン」といった現場力を織り込みながら、人と機械がスムーズに連携するシステムの実用化を狙う。
両者ともそれぞれのモノづくりの強みに根ざしたシステム作りを目指し、それだけで優劣が付けられるものではない。ただ、日本は伝統的にソフトウエアが弱い。国内で流通する有力3次元CADのほとんどが外国製であることがそれを物語る。
金属3Dプリンターでも、ドイツや米国では急ピッチで導入が進むものの、日本での普及は今一つ。軽量で高い機械強度を併せ持つ複雑構造の部品・部材を作るには、設計思想自体の変革が求められるからだ。
日本の金属3Dプリンターメーカー関係者は「そもそも日本企業には3Dプリンターの特性を生かせる設計者が少ない」と嘆く一方、「企業が大量受注を抱え、設計者の養成まで手が回らない事情もある」と明かす。
自動車では、電気自動車(EV)や自動運転、シェアリングで競争軸が変わろうとしている。歴史的に端境期にはプレーヤーが入れ替わる「ちゃぶ台返し」が起きやすい。「日本はモノづくりでは絶対負けない」との思いが単なる精神論に陥らないよう、デジタル化の先行きを冷静に見極めつつ、着実に手を打っていく必要がある。
(2018/5/18 05:00)
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