[ 金融・商況 ]
(2018/6/10 07:00)
社会課題解決に向けたフィンテック活用を図れ
■日本のフィンテック投資額は米、英、インドの30分の1
各国のフィンテック投資額を対国内総生産(GDP)比でみると、日本は米国、英国、インドの30分の1程度にとどまっている。日本でもフィンテック・スタートアップ(新興企業)が登場し、金融機関や一部の大企業と協業が散見されるものの、フィンテックはいまだに日本の潜在力を引き出し切れていない―。
アクセンチュア金融サービス本部は5月29日、世界のフィンテック最新動向について説明会を開いた。
日本の2015~2017年のフィンテック投資額は主要16カ国中16位。2017年の投資額は1億500万ドル、投資件数は24件にとどまっている。【図1】
同社の中野将志常務執行役員金融サービス本部統括本部長は「近年、米国などフィンテック先進国の動向をみると、社会課題を金融機関がフィンテック企業とともに解決していくケースが見え始めている。社会課題先進国と言われる日本こそ社会課題に向けたフィンテックの活用が期待される。そのためには金融機関とフィンテック企業だけでなく、産官学が一体となった取り組みが必要となる」と述べる。
この社会課題変革型のフィンテックの実例として同社は米国の三つの事例を挙げる。
①社会コストの削減:Bright Health 医療機関ネットワークによる個人医療保険
②経済活性化(商流):Produce Pay 農産品の市場価格試算ソフトの開発。出荷プラットフォーム活用により翌日に手数料の融資を実施
③クリーンエネルギー(設備型):Joule Assets クリーンエネルギーや省エネ設備に対してIoT情報を組み合わせた有利なファンディングを実施
他方、邦銀が取り組むべき課題として【図2】を示した上で、右側のスケール追求型のメガバンクを除き、多くの地銀、第二地銀は業務効率を進めるために規模追求のみでフルバンキング機能を保持するのは困難で、コスト削減を図りつつ、データ活用などの新ビジネスを展開する必要があるとした。
同分析では世界の地域別フィンテック投資額の推移、事業領域別のフィンテック投資の推移など興味深いデータが示されている。(隔週日曜日に掲載)
著者プロフィール
丸山隆平(まるやま・りゅうへい)
1972~1989年 日刊工業新聞記者としてICT産業、流通業界など取材。1990~2012年、IRコンサルタントとして100社以上の財務広報をサポート。2013年~フリーの経済ジャーナリストとして、経済誌、Webメディアで活動。現在、金融タイムス記者、プレジデントオンライン、ZUUonlineなどに寄稿。著書に『AI産業最前線』(共著、ダイヤモンド社)、『まるわかりフィンテックの教科書』(プレジデント社)などがある。1948年、長野県生まれ。
(2018/6/10 07:00)