[ オピニオン ]
(2018/6/7 05:00)
昭和30年代の「東京オリンピック渇水」をはじめ、1973年の「高松砂漠」、78年の「福岡渇水」、94年の「列島渇水」―。高度経済成長期以降に渇水が発生し、国民生活や経済活動に多大な影響を与えた。
政府がまとめた2018年版『水循環白書』は、頻発する渇水を特集で取り上げた。記憶に新しいのは、16年に首都圏で生じた渇水。利根川では79日にわたり取水制限が実施された。
この年は西日本でも梅雨明け後の小雨により四国地方の吉野川水系で河川流量が減少し、全国8水系・12河川で取水制限を実施。翌17年も春から夏に少雨傾向となり、取水制限は関東から九州北部まで12水系・14河川に上った。
こうした中、首都圏では、流域を越えた広域的な水利用を可能とするネットワーク構築が奏功し、被害を最小限にくい止めた。武蔵水路や北千葉導水路などが機能を発揮し、上流ダムの放流量を低減、貯水量を温存できたのが要因だ。
首都圏の多様な水系を水源とした強靱(きょうじん)な水供給システムは、渇水や災害時にも水を安定供給できる好事例の一つ。ほかに水の有効利用に向けた取り組み事例を多く紹介した。渇水リスクにどう備え、向き合うか。雨期が本格化する前に、考える契機としたい。
(2018/6/7 05:00)