[ オピニオン ]
(2018/6/8 05:00)
研究・教育・社会貢献で世界トップクラスを目指す大学を、文部科学省が支援する「指定国立大学」制度が本格化した。国に言われる以上のことを自ら企画し、経営などを改革する新たな大学ブランドに注目したい。
指定国立大学は2017年度からの新制度で6月に東北大学、東京大学、京都大学が、18年3月に東京工業大学、名古屋大学がそれぞれ指定された。名大は岐阜大学との経営統合の議論が注目を集めているが、これは指定に向けたプランを練る中で具体化してきた。
政府は大学の連携・再編の大きな方向性を議論している。名大は指定国立大の構想を練る中で、旧帝大で最も規模が小さいことを振り返り、統合による競争力強化へと自らかじを切った点が興味深い。
指定国立大のポイントは、日本の大学の弱みとされる財務基盤の強化に向けた計画だった。新事業創出のインキュベーション施設、キャンパス有効利用の再開発事業、100億円の寄付基金などが各大学から上がっている。文科省高等教育局の義本博司局長は、同制度により「大学の機能強化に向け、特に執行部の間で強い意識改革が進んだ」と効果を強調する。
東大を除く4大学が採用したプロボスト(総括理事・副学長)制も目新しい。これは学長が学外資金獲得を中心とする渉外活動に力を注ぎ、プロボストは部局の意思統一など学内のまとめ役をするもので、米国の大学で成功したスタイルだ。私立大学で理事長が経営を、学長が教学(教育と学問=研究)を見る形とも重なる。
指定国立大への申請には国際化や外部資金の数字のハードルがあり、クリアしたのは7大学。大阪大学と一橋大学が指定候補のまま残るが、両大学は2回目の申請を見送った。一方で旧7帝大のうち北海道大学、九州大学は、申請可に転換すべく学内の議論を進めている。
今の指定は国立大の第3期中期目標期間中(21年度まで)のものだ。第4期に巻き返しを期す大学を含め、同制度による改革推進に期待したい。
(2018/6/8 05:00)
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