[ トピックス ]
(2018/7/22 07:00)
彼の名は「さかい三十郎」。正義感にあふれた庶民派である。そんな彼が出張時に出会ったノンフィクションのハプニングを「小さな事件簿」としてつづったのが本連載である。
「本当にそんなことが新幹線内で起こるの?信じられないなぁ…」との思いで読まれる方も多いかもしれないが、すべてノンフィクション(事実)なのである。彼の大好きな「映画の話」もちりばめてあるので、思い浮かべていただければ幸いである。
それでは車内で遭遇した事件簿の数々をご紹介させていただく。
* *
眠りにつきながら思い出した名画の数々
1月28日は三十郎の誕生日である。14年前の誕生日、平成16年1月28日のこと。その前年10月に開業した、東海道新幹線の品川駅から京都駅へ向かう14号車の車窓から、通りすぎる品川駅界隈を見ながらこんなことを思い出した。
「生誕(上映)何十年の映画は何があるか?」
この年は上映50年の“当たり年”だった。洋画で言えば「ローマの休日」、「恐怖の報酬」、「帰らざる河」、「ダイヤルMを廻せ!」。邦画で言えば永遠のベストワンである「七人の侍」、「二十四の瞳」、そして……。
この品川市街地を破壊したモノがある。戦火?いや破壊の怪獣王「ゴジラ」(製作1954年、上映時間98分、監督本多猪四郎、特技監督円谷英二、音楽伊福部昭)によってである。相次ぐ水爆実験により太古から蘇ったゴジラは口から放射能を吐き、この近辺から有楽町界隈まで焦土と化した。
ゴジラはハリウッド映画の「キングコング」(1933年、ウィリス・オブライエン製作の名作)および「原始怪獣現る」(1953年、レイ・ハリーハウゼン製作、キングコングのオブライエンの愛弟子)を受けたものであるが、三十郎はどちらの作品も好きである。
キングコングが軍用機と最終バトルを展開したNYエンパイアステートビルディングを訪れ、壁面を登るコングと対面したこともあるほどだ(また、この2大モンスターは1962年、東宝創立30周年大作「キングコング対ゴジラ」で対戦している。幼い頃、福岡県の柳川東宝で喜んで見たものだ)。
品川近くの浜松町駅には貿易センタービルがある。1976年にリメイクされたキングコングは、米国NYのこのツインビルに登った(9・11テロ特攻グループにより破壊された、今はないこのビルを思うと寂しい)。2005年に再リメイクされたキングコングは、原作のエンパイアビルに戻ったので、ホッとしている。
テロで思い出す映画は日本公開が延期された「ブラック・サンデー」(製作1977年、143分、監督ジョン・フランケンハイマー、主演ロバート・ショー)。スーパーボール競技場に集った観衆8万人を、飛行船爆破計画から守る一品である。
ビル・テロのアクション巨編は「ダイ・ハード」(製作1988年、監督ジョン・マクティアナン)。ロスの日系高層ビルが13人のテロリストに占拠される。妻と復縁すべく別居中のNY刑事が立ち寄り、孤軍奮闘する脚本で、疲れた時の漢方薬となる。
眠りにつきながら、新幹線の犯罪映画も思い出していた。何より「新幹線大爆破」(製作1975年、上映時間152分、監督佐藤純弥、犯人役は高倉健)であろう。
脅迫電話が当時の国鉄(現・JR)に着信する。
「ひかり109号に時限爆弾をセットした!!」
「時速80キロ未満になると自動的に爆発する!!」
当時の国鉄は製作協力を拒み、ミニチュア新幹線でセット撮影されている。この脚本は、1994年の「スピード」に流用されたことを即、思い出した。
「通勤バスに時限爆弾をセットした!!」
「時速50マイル、すなわち時速80キロ未満になると、自動的に爆発する!!」
三十郎の大好きなサンドラ・ブロックが好演し、ブレイクする。
さらに、国鉄つながりでフランス国鉄映画も思い出した。「大列車作戦」(製作1964年、上映時間134分、監督ジョン・フランケンハイマー)である。
ノルマンディ上陸作戦後、パリを占拠していたナチスドイツ軍は撤退を始めた。しかし、手ぶらでは帰らず、パリの財産である美術品の剥奪を企てる。搬送は列車で行う。これを阻止するのが当時のフランス国鉄員であり、列車ダイヤを巧みに操作し、ドイツへの輸送を混乱させる。バート・ランカスター主演で、脚本も良く練られている、おすすめの一作である。
「列車と戦争」で連想したのがバスター・キートン主演の名作「大列車追跡(キートン将軍)」。1926年製作であるが、脚本・撮影(SFX・CG・コマ撮りでなく実写)ともに素晴らしい、サイレント・アクション喜劇の最高峰である。
南北戦争を舞台に、機関車ジェネラル号が縦横無人の活躍をする、素晴らしい作品だ。今も色あせない「セピア色のアクションフィルム」に感動し、三十郎の映画コレクションに加えた。これもぜひご覧いただきたい。
事件始末記・筆者の独り言
可愛い列車の映画も思い出した。「小さな恋のメロディ」(製作1970年、106分、監督ワリス・フセイン)。イギリス・パブリックスクールに通う小学生2人の初々しい恋物語だ。マーク・レスターとトレーシー・ハイドの子役2人が、ラストシーンでトロッコに乗り、大人の世界から脱出する。17歳の時に見たが、ビージーズの音楽も心に残る微笑ましい一作である。これもご覧あれ。
(雑誌「型技術」三十郎・旅日記から電子版向けに編集)
(2018/7/22 07:00)