[ オピニオン ]
(2018/8/21 05:00)
一基1340億円以上する、陸上配備型イージス・システム(イージス・アショア)のレーダー概要が決まった。核弾道ミサイルからの防衛はもちろん日本にとって重要だが、核弾道ミサイルが日本に向け発射されるのはよほどの事態だ。その事態より、はるかに高い確率で起こるかもしれない事態を我々は念頭に置かなければならない。
防衛省によると、2018年4―6月の緊急発進件数は合計271回で、前年同期に比べ42回増加した。対象国で最も多いのは中国だ。中国機の割合は約64%で、回数も同72回増の173回。ロシア機は同30回減の95回で、中国機の増加が際だっている。
狙いは何か。あらためて言うまでもあるまい。沖縄県の尖閣諸島周辺の接続水域では、中国の船舶が毎週のように侵入を繰り返す。艦種も漁船や公船から、フリゲート艦など“軍艦”が増えてきた。米朝首脳会談で朝鮮半島に融和ムードが起きても、この状況は変わらない。
南沙(スプラトリー)諸島では中国が各国の意見を無視して、滑走路やミサイル基地の建設を進めている。日本で同様のことが起きて政府が抗議しても、状況は同じだろう。上陸を阻止すること、初動の大切さをこの事例は教えている。
南西諸島防衛のため防衛省は16年1月に那覇基地にF15戦闘機の飛行隊を発足させ、18年には島しょ奪還部隊の水陸機動団も誕生した。ただ、沖縄本島から尖閣諸島や石垣島、宮古島までは約400キロメートルと遠く、初動に遅れれば苦戦は免れない。
同エリアは島の数がきわめて多く、人の手ですべてを監視するのは困難だ。無人機はこの役目にうってつけだろう。米軍の「グローバルホーク」は36時間の滞空能力があるが、広い日本国土の防衛では、それでもまだ足りないとの指摘がある。
防衛省はグローバルホークを手本に無人機の開発を進めており、これを急ぐ必要がある。無人機はこれ以外にも、負担の多い対潜哨戒機の任務をカバーでき、自衛隊の人員不足の助けにもなる。メリットは多い。
(2018/8/21 05:00)