[ オピニオン ]
(2018/10/10 05:00)
政府が新たなルールをつくる場合も、民間企業が従いやすい弾力的なものにしてほしい。
経団連は9日、新卒学生の就職活動のルール撤廃を決めた。これまで経団連は、企業の新卒採用について広報活動が前年3月1日以降、採用選考開始が同6月1日以降、正式内定が同10月1日以降という『採用選考に関する指針』に基づく自主ルールを設けてきた。2021年春に入社する学生からこうしたルールがなくなり、企業は自社の都合に合わせた採用ができることになる。
就活ルールは、経団連の会員である大手企業間の「申し合わせ」であり、強制力がない。このためルール破りが目立ち、会員企業の中でも完全には守られない状態にある。「守れないルールなら、やめた方がいい」という批判は古くからある。
経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)は「何かしらのルールがあること自体には抵抗感はない」とする一方で「採用のあり方は変わっている。ルールを徹底するのが経団連の役割ではない」と強調した。通年採用や中途採用の比率が高まり、外資系企業が就活ルールに無関係に採用活動を展開する中で、産業界を代表する大企業が自主的な申し合わせに縛られている現状への不満は理解できる。
ただ、大企業にやや遅れる形で採用活動をしてきた中小企業にとって、目安となる時期が分からなくなることは困る。中小企業を代表する立場の日本商工会議所の三村明夫会頭が不満を示したのも当然だ。
就職活動に臨む学生への影響は、それ以上に大きい。経団連が政府の要請にこたえる形で、15年の採用活動の選考開始を8月1日に遅らせた時には企業も学生も大混乱した。「守れないルール」にも一定の意味があったことを示すものだ。
政府は経団連の決定を受けて、新たな就活ルールを検討するという。何らかのルールが設けられることは望ましい。ただ、公的なルールがあまりに硬直的だと企業には使いにくい。産業界の声に耳を傾けた柔軟なルールを期待する。
(2018/10/10 05:00)