[ オピニオン ]
(2018/10/25 05:00)
事故による広域停電の防止や過剰電力の利用のために、発送電分離と並行した電力系統の強化が求められる。
9月に発生した北海道の大規模停電について、電力広域的運営推進機関の第三者委員会が再発防止のための中間報告をまとめた。地震発生後のブラックアウトから北海道全域への電源供給まで45時間を要した点について「問題となるような点は確認できなかった」という。
また再発防止に向けて、緊急時に強制的に送電を止める負荷遮断量の拡大や、本州と電力を融通しあう連系設備の増強が必要だと提言している。
注目すべきは、最大規模の苫東厚真発電所の停止だけでなく、地震の揺れによる送電線事故がブラックアウトの要因となったと分析していることだ。送電線事故で他地域から切り離された道東地区で供給が過大となり、運転中の水力発電所を強制停止した。これがなければ北海道全域の一斉停電は防げた可能性があるという。
電力は需要と供給を一致させる「同時同量」が大前提だ。供給が多すぎても停電事故が起きてしまうことを改めて認識しなければならない。
今回の事故とは無関係だが、九州でも発電量過剰が問題になっている。九州電力は不需要期の週末に、一部の太陽光発電所からの電力供給を抑制する「出力制御」に踏み切った。クリーンな再生可能エネルギーを使わずに捨てる結果となるのは実にもったいない。しかし、「同時同量」を守って停電を回避するためにはやむを得ぬ措置だ。
一部地域の電力の不足・過剰を補うには他地域との連系が望ましい。事故時に緊急融通を活用すれば停電時間を短縮できるし、過剰な電力も大消費地に送電すれば無駄にならない。
地域独占で送配電網を整備してきた日本は、地域をまたぐ連系設備が弱いとされる。2020年には、電力自由化の総仕上げとして電力各社から送変電部門を切り離す発送電分離が予定されている。非常の事態にも柔軟に対処できるよう、系統の強化に取り組んでほしい。
(2018/10/25 05:00)
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