[ オピニオン ]
(2018/10/30 05:00)
個人データは“21世紀の石油”ともいわれる。これを有効活用するには国や産業界の取り組みだけでなく、データの利活用に向けた議論を国民全体に広げることが必要だ。
欧州では、個人情報の扱いルールを定めた「一般データ保護規則(GDPR)」に続き、プライバシーに直接関わらない「非個人データ」の扱いを巡る議論も始まっている。
欧州委員会が描く戦略は、EU(欧州連合)各国にまたがる「デジタル・シングル・マーケット」を築くこと。国ごとの規制を原則なくし「データ・エコノミー(経済圏)」の成長を目指す。その一環として、非個人データを含めデータ流通の促進に力を注ぐ。
非個人データとは、例えば入退出のログ(履歴)や機器番号などを指す。機器番号はそれ自体はGDPRとは関係ないが、機器の所有者が特定されればプライバシーにも関わってくる。一連の議論ではこうしたプライバシーの範ちゅうをどう線引きするかといった難問に加え、非個人データについてもデータのポータビリティー(移行性)の適用を検討している。
すでに欧州のデータ保護規制監督機関が6月末に修正案を出し、非個人データのあり方についての最終調整に入った。「プライバシー性があるデータはすべてGDPRを適用する方向で、議論が深まっていく」(大洞健治郎KPMGコンサルティングディレクター)見通しだ。
わが国は2017年の改正個人情報保護法により、個人データの保護と利活用をバランスさせる方向にかじを切った。さらに総務省と経済産業省の共管で、生活者が自らの個人データを安心・安全にコントロールする新制度「情報銀行」が検討され、具体化の道筋も見えてきた。
ただ、国民的な議論としての広がりは今一つだ。データ流通を取り巻く環境は欧州とアジアでは異なるが、「環太平洋連携協定(TPP)の範囲内でデータ流通がテーマとなることだってあり得る」(大洞氏)。“21世紀の石油”を価値あるものとする国家戦略に期待したい。
(2018/10/30 05:00)
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