[ オピニオン ]
(2018/11/2 05:00)
厚生年金と国民年金の約160兆円の公的年金を運用する年金積立金管理運用独立法人(GPIF)や公務員らが加入する共済年金などの公的年金のリスク性資産が過去最高となった。政府はこうした背景とリスク対策を丁寧に示してほしい。
GPIFの2018年6月末の外国株式と日本株を合わせたリスク性資産は126兆5410億円に達した。18年3月末の国内株での運用比率が「目安」の25%を超え、外国株も約24%。一方、国債購入で財政投融資を通じ国内インフラ整備に資金が投入されていたが、運用見直しで27・5%まで下がった。
日銀が公表した資金循環統計によると、GPIFを含む公的年金は18年4―6月期に日本株を2583億円、外国株を1兆1093億円買い越した。一方、国債・財投債は3791億円の売り越しで、6月末残高は45兆9584億円と03年末以来の水準。国庫短期証券を合わせた「国債等」残高は1100兆円で、公的年金の保有比率は4・2%。利回り低下で国内債券中心の運用が難しくなったためだ。
16、17年度は計18兆円の運用益を出した。「株式は短期的には変動が大きいが、長期では債券に比べて資産が増えやすい」というセオリーに沿った形だ。
日銀の超低金利政策で国債への再投資はうま味が薄くなっている。このため、GPIFは国内債に現金比率を加えることを決めた。6月末時点で6・65%の現金を合算すれば、国内債比率は33・79%に上昇する。
GPIF以外も公的資金の国債・財投離れが進む。73兆円の国債を保有するゆうちょ銀行も約3割まで国債運用比率を減らし、海外有価証券を軸にリスク性資産を約80兆円まで積み増した。
ただ、「もしリーマン・ショック時に株式運用比率が高かったら」とも考えるべき。一方、国内債券比率を元に戻すのも難しい。インフレが起きれば金利が上がり、債券評価損がでる。政府はリスクに備えた運用方法を提示するとともに、国民や加入者に説明する責任がある。
(2018/11/2 05:00)