[ オピニオン ]
(2018/11/26 05:00)
地球環境問題を背景に導入が進む再生可能エネルギー。政府の「エネルギー基本計画」にも、今夏の改定で再エネの主力電源化が明記された。だが、さまざまな課題も浮き彫りになった。小規模な分散型電源であっても自律的な制御機能を備え、地域間連系の強化で、電気を無駄なく使うことが求められる。
9月上旬に起こった北海道地震では、道内の全電源が停止する大規模停電(ブラックアウト)に陥った。九州では、10月半ばから11月にかけての週末(土日)、一部の太陽光発電所を止め、出力が抑えられた。ブラックアウトは地震被害が北海道電力の想定を上回り、電力供給が追いつかなくなったことが原因。一方、九州電力が実施した再エネ出力制御は、電力需要が減る週末の日中、太陽光発電がフル稼働すると供給過剰になってしまう恐れがあったため。
電力は需給バランスが崩れて、周波数が上下どちらに振れても停電につながる。送配電を担う電力会社にとって、出力変動が大きい再エネ電源は極論すれば“じゃじゃ馬”のような存在。実際、北海道電によるブラックアウトからの復旧過程でも、風力発電などの再エネ接続は影響が出にくいように、大規模集中型の火力発電所などが再稼働して電力系統がある程度の規模になってからになった。
ただ、太陽光発電協会(東京都港区)の調査によると、北海道地震後の停電時も太陽光発電システムがある家庭の85%が運転モードを切り替えて発電電力を自家利用し、蓄電池を併設した家庭では2日間程度、普段通りに生活していた。一般家庭の太陽光発電システムは最も小さい分散型電源。今後の再エネのあり方として「自律」と「連系」がキーワードになる。
再エネに蓄電池を組み合わせれば非常時、マイクログリッド(小規模電力網)としての運用できる可能性が広がり、電力系統との連系も容易になる。残念ながら現状のスキームには再エネ導入に併せて、蓄電池や地域間連系線などを整備する仕組みがない。新たな制度設計が必要な段階に差し掛かっている。
(2018/11/26 05:00)