[ 機械 ]
(2018/12/3 05:00)
超小形電磁ブレーキ「SBR」
【世にないサイズ】
「電磁ブレーキの小型化は進む。今まで世の中にないサイズを目指そう。将来、必ずニーズは出てくる」。プロジェクトを率いた前田豊電子精機本部モーションコントロール機器工場技術部クラッチグループ長は開発当時を振り返る。
直径10ミリメートル、高さ10ミリメートル。従来品に比べて体積比で45%の小型化を実現した業界最小・最薄級の超小形電磁ブレーキを開発したシンフォニアテクノロジー。人間の手のように繊細に動く医療支援ロボットや飛行ロボット(ドローン)、義手、電子部品実装機など大きな需要が期待される。
電磁ブレーキはコイルに通電して発生する電磁力を利用し、回転運動を止める装置。中でも無励磁作動形電磁ブレーキはサーボモーターで動く関節部分を保持・制動し、主に産業用ロボットや工作機械に用いられている。
シンフォニアは1957年の生産開始以来、国内トップクラスの実績を重ねてきた。これまで顧客の要求に応じて製品を作り込んできたが、業界最小・最薄を追求し、自ら市場を創造する新たな開発アプローチを採用した。
【強度と生産性】
「これだけ小さくなると、強度と生産性を確保できるか心配だった。他のブレーキ以上に気を使った」と、開発チームの一員である電子精機本部クラッチ工場技術部の大山法久氏は明かす。
二つの大きなブレークスルーがあった。一つはネジを使わないこと。通常、複数の機構部品をネジでつなぎ合わせるが、スペースを取られることが難点。限られた空間内で消費電力を抑えつつ、大きなトルクを発生させるにはどうしたら良いか。ネジを使わず、機構部品同士をがっちりはめ込むような組み立てを実現し、巻線スペースを増やすことで高トルクを維持。加えてネジ不要のシンプル構造は、自動組み立てに適しており、将来の全自動化を視野に入れる。
【成形の難易度】
二つ目が摩擦材だ。摩擦面には樹脂を含んだ摩擦材を使用するが、超小形に適用するには成形の難易度が高まり、製造コストが跳ね上がる。同社は従来、摩擦材を内製しており、トライボロジー(摩擦学)の研究成果を摩擦面構成に活用し、コスト上昇を抑えた。
小型の人協働ロボットなどに採用され、18年度から量産に入った。事業規模は3年後に年5億円が目標だ。(編集委員・鈴木真央)
(2018/12/3 05:00)