[ オピニオン ]
(2018/12/12 05:00)
人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)を活用したデジタル変革が本格化してきた。その動きは産業界だけでなくコンマ1秒を争うモータースポーツ界にも広がっている。
フォーミュラワン(F1)では、エンジンの回転数やブレーキ圧など1レース当たり数百ギガバイト(ギガは10億)に及ぶデータを瞬時に解析し、最適なレース戦略を策定。レース中のドライバーのメンタル情報も生体情報を計測可能なアンダーシャツで可視化した。
その結果「ドライバー間のタイム差が縮まった」と話すのは、日本人初のF1フルタイムドライバーである中嶋悟さん。2018年日本GPの予選で1位と最下位のタイム差は2秒半と、中嶋さんが現役だった1990年の3分の1以下になった。
ドライバーの勘や経験でマシンを仕上げた時代はアイルトン・セナを中心に個性豊かなドライバーがレースを盛り上げた。一方、あらゆるデータが可視化された現代のドライバーは個性を出しにくくなったとされる。
中嶋さんは「自分が何を目指すのか、強い信念を持つことが競争に勝つ要素だ」とアドバイスする。デジタル変革で各社のカイゼン活動が画一化されそうな産業界でも中嶋さんの言葉が参考になる。
(2018/12/12 05:00)