[ オピニオン ]
(2018/12/17 05:00)
1985年7月13日の英ロンドン近郊、ウェンブリー・スタジアム。8万人の観客は1人のスーパースターの登場を待っていた。
大ヒット中の映画『ボへミアン・ラプソディ』は、20世紀最大のチャリティー音楽イベント「ライブエイド」でのバンド「クイーン」の演奏、21分間の再現がハイライトだ。
というより、このシーンを描くためにこの映画は作られたと言ってもいい。1980年代のファッションに身を包んだ熱狂的な観客、表題作のほか『伝説のチャンピオン』『ウィ・ウィル・ロック・ユー』など繰り出される名曲、そして役作りに1年を投じたラミ・マレック演じるクイーンのボーカル、フレディ・マーキュリーの神々しいまでの鮮烈な輝き…。
映画館はさながらライブ会場で、臨場感はすさまじい。最新のサラウンドシステムの劇場ならなおさら。あたかも85年の会場にタイムスリップしたような、劇中の言葉を借りれば「天国にタッチする」快感だ。
映画の大ヒットはこの感覚にこそある。ストリーミング配信で映画を気軽に楽しめる今、あえて劇場に行く。その「不便さ」を乗り越えさせる、そこでしか味わえない特別な体験こそ、21世紀型の劇場の楽しみ方かもしれない。
(2018/12/17 05:00)