[ オピニオン ]
(2018/12/24 05:00)
私事になるが、先日山本条太郎が建てた別荘を観ようと、鎌倉を訪れた。別荘は1918年に建築され、今年で100年になる。鎌倉の長谷観音の近くに位置する。約1万6500平方メートルの広大な敷地内で、山裾の高台にそそりたつ約500平方メートルの数寄屋建築の住宅だ。
関東大震災以前に建てられた建物が鎌倉に現存するのは奇跡的なことらしい。2016年に国の登録有形文化財に指定される。山本家から九鬼家に譲渡され、その後宗教法人神霊教へと渡っていく。
条太郎は1867年生まれで、三井物産出身の実業家。立憲政友会の幹事長や第10代満州鉄道総裁などを務めた。初代の後藤新平、松岡洋右と並んで大物総裁と評された。
三井物産時代、上海支店長として、中国の商品を外国に売り、外国商品を中国に売り込む国際貿易の新分野に乗り出す。英国をはじめとする商人らに独占されていた覇権争いで、物産の地位を確立した。中国に始まる物産の国際貿易進出が、七つの海に物産の名をとどろかせるに至る。
日本の政治家で数少ない、グローバル戦略を描けた経済政治家の先駆者と言える。米中の二大大国にはさまれて翻弄(ほんろう)される日本の姿は、条太郎にはどう映っているのだろうか。
(2018/12/24 05:00)