[ オピニオン ]
(2019/1/29 05:00)
世界史上には数多くの「大帝国」が存在する。その中で、どうしてローマ帝国だけが2000年を超える長期的な支配を成し遂げたのだろうか。
ローマというと、巨大な円形競技場や水道橋などが頭に浮かぶ。もちろん、治水工事もローマ発展の要因の一つには違いない。しかし、それだけではない。大きな原動力の一つが、ローマ法の整備による安定支配だ。
ローマ法は、西洋社会にも大きな影響を与え続けている。真に法律学を確立したのはローマ人だった。優れて「常識的」な国民で、その気質は法体系形成の上でも、いかんなく発揮された。それは、具体的な問題を短い文章に要約し、それを規則に変えるという能力だ。
彼らは、ある法制度をつくる場合、十分に詳細にわたって常識を追究し、徐々にその法の中の理性的でない要素を取り除いていく方法をとったという。ローマ法とは、ローマ人にとって守るべき「常識」だったと言える。
機会さえあれば法の網をかいくぐろうとする日本人とは一線を画す。今回発覚した毎月勤労統計調査をめぐる不適切調査は、厚生労働省だけの問題ではない。統計に対する不信は、「法治国家」の基盤を揺るがしかねない。ローマに学ぶときかもしれない。
(2019/1/29 05:00)