[ ICT ]

第61回十大新製品賞/本賞 富士通 新アーキテクチャーのコンピューター

(2019/2/1 05:00)

  • デジタルアニーラを開発した研究者ら(左端が藤沢エキスパート)

【クラウドサービス「FUJITSU Quantum-inspired Computing Digital Annealer」】

計算量が膨大で従来のコンピューターでは解くことが難しい「組み合わせ最適化問題」に挑む。富士通は量子現象に着想を得た新しいアーキテクチャー(設計概念)「デジタルアニーラ」によって、この新市場の開拓に乗り出した。

デジタルアニーラは量子の振る舞いを取り入れたアニーリング方式の一つ。量子ビットの仕組みを再現する専用のデジタル回路「DAU」の開発をはじめハードウエアの構成を一から考え、超伝導回路を用いる量子アニーリングとは異なる道を選んだ。

こだわったのはビット同士の相互作用において、組み合わせパターンのすべてに対応できる「全結合」の実現。全結合を前提とすることで「組み合わせ最適化問題について数式化さえできれば面倒なハードウエアへの落とし込みを考えず、すぐに問題が解ける」(藤沢久典富士通研究所デジタルアニーラプロジェクト・エキスパート)と考えた。

スタートは2014年。研究者2人で試行錯誤で始めたが、1年程度で手応えを得て、実用化への受け皿となる事業部との話を始めた。試作機の社内公開も経て、事業部に正式に話を持ち込んだのが16年冬だった。

開発当初は、カナダで量子アニーリング機が登場した頃で、他社からデジタル回路での論文発表もあった。だが、事業部側では「将来性を評価し、スピード最優先で引き受けた」(中村和浩富士通AIサービス事業本部事業部長代理)。

事業化に向けて、真っ先にミドルウエアを提供するカナダの1QBitと基本合意を締結。以降、社内合意の取り付けや契約書の作成、営業への説明などを「チーム一丸となり、すべてを並列で行った」(中村事業部長代理)。

第1世代のクラウド版の提供が18年5月。「研究所の新技術がこんなに速く事業化できたのは例がない」と藤沢エキスパートは振り返る。デジタルアニーラはいまや海外事業の先兵として、全社からも期待がかかっている。(編集委員・斉藤実)

【製品プロフィル】

心臓部であるDAUは第2世代品となり、ビット間の全結合の規模は現行比8倍の8192ビットに拡張し、処理速度は従来比100倍と飛躍的に高まった。用途は物流の効率化や災害時の復旧計画、創薬開発、投資ポートフォリオの最適化など幅広い。クラウド版に加え、2月からはオンプレミス(自社保有)機も投入する。

(2019/2/1 05:00)

電機・電子部品・情報・通信2のニュース一覧

おすすめコンテンツ

「現場のプロ」×「DXリーダー」を育てる 決定版 学び直しのカイゼン全書

「現場のプロ」×「DXリーダー」を育てる 決定版 学び直しのカイゼン全書

2025年度版 技術士第二次試験「建設部門」<必須科目>論文対策キーワード

2025年度版 技術士第二次試験「建設部門」<必須科目>論文対策キーワード

技術士第二次試験「総合技術監理部門」択一式問題150選&論文試験対策 第3版

技術士第二次試験「総合技術監理部門」択一式問題150選&論文試験対策 第3版

GD&T(幾何公差設計法)活用術

GD&T(幾何公差設計法)活用術

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

Journagram→ Journagramとは

ご存知ですか?記事のご利用について

カレンダーから探す

閲覧ランキング
  • 今日
  • 今週

ソーシャルメディア

電子版からのお知らせ

↓もっと見る

日刊工業新聞社トピックス

セミナースケジュール

イベントスケジュール

もっと見る

PR

おすすめの本・雑誌・DVD

ニュースイッチ

企業リリース Powered by PR TIMES

大規模自然災害時の臨時ID発行はこちら

日刊工業新聞社関連サイト・サービス

マイクリップ機能は会員限定サービスです。

有料購読会員は最大300件の記事を保存することができます。

ログイン