[ オピニオン ]
(2019/2/21 05:00)
建設産業で建設ロボットの開発が活発化している。大手ゼネコンは将来の担い手不足をにらみ、人と協働作業する建設ロボットの開発に力を注ぎ、最近は実際の建築現場で試行運用するケースも出ている。多くの現場作業員の声を開発に生かし、着実な普及につなげたい。
東日本大震災以降、各社のロボット開発テーマは遠隔操作技術や情報通信技術(ICT)活用が中心だったが、2013年に東京五輪・パラリンピックの開催が決まると状況が一変。現場労働者不足が懸念され、生産性向上、省力・省人化、労働環境の改善を目的に、建設ロボット開発が動きだした。
日本建設業連合会(日建連)は25年度に建設業の技能労働者が14年度比で約128万人減少すると試算。若手の新規入職者90万人を確保できても、残る35万人分は生産性向上による省人化で補う必要があることも開発を後押ししている。
すでに清掃やコンクリート床仕上げロボットなどがリース会社から外販され、現場で使われている。床仕上げロボットは作業員から長時間の過酷な中腰作業をなくし、1000平方メートルの床仕上げでは、作業員を半減できるという。大手5社だけみても2社がコンクリート床仕上げ、3社が搬送系、全社が溶接ロボットを手がけるなど開発競争は激化している。
こうした中、技術力を競う領域と競わずに各社の一番良いものを使い、価格を下げて普及させる“競争と協調”の考えが出てきた。例えば鹿島は溶接、取付など品質や技術を伴うロボットは自社開発する一方、搬送や墨だし、清掃など必ずしも競争領域にないロボットは他社と提携や協調する方針を掲げる。
建設ロボットは1980―90年代にも累計150種類が登場し、大半が消えた。大きくて重く、高く、省力化を図れず、費用対効果が下がったためだ。
各社の開発者は「過去の失敗を繰り返さない」との思いが強い。他社と協調できる分野ならば他社開発品の活用などで価格を抑え、ロボット普及に弾みを付ける発想も必要だ。
(2019/2/21 05:00)