[ オピニオン ]
(2019/3/1 05:00)
中国経済の減速が鮮明になってきた。足元の景気対策とその後の成長路線をどう描いていくか。中国政府は、一段と厳しい経済の舵取りを迫られる。中国は、世界の国内総生産(GDP)の約15%を占める。6%台の成長を維持しているとはいえ、その減速は世界の経済の大きなリスク要因と言える。
中国経済は二つの危機に悩まされている。一つは「灰色のサイ」だ。2008年のリーマン・ショック後、「ブラック・スワン(黒い白鳥)」という例えが、金融・資本市場で言われた。ブラック・スワンは確率は低いものの、大きな影響を与える事件のことであり、一方の灰色のサイは発生する確率が高い上に影響も大きな潜在的リスクのことだ。
中国における最大の灰色のサイは、高成長の代償として積み上がった膨大な民間債務だ。国際通貨基金によると、金融を除く中国の民間債務のGDP比率は、16年に235%、22年には290%に達する見通し。これは日本のバブル期を上回る。
もう一つの危機は、「中所得国のわな」だ。富士通総研経済研究所の金堅敏主席研究員は、「(中国は)実は十数年も前から中所得国のわなにはまってしまう懸念を抱いてきた」と指摘する。中所得国のわなとは、多くの途上国が経済発展により1人当たりGDPが中程度の水準(おおむね1万ドル)に達した後、発展パターンや戦略を転換できずに、成長率が低下、あるいは長期にわたって低迷することを指す。そのわなに陥った国として、アルゼンチンやブラジル、チリ、マレーシア、メキシコなどを挙げる専門家が多い。
金主席研究員は、こうした中所得国のわなを回避するためには、「生産性を高めて、自国のイノベーションを進め産業の高度化をはかっていく」ことが重要と強調する。
中国は、足元では大型の景気対策を進めている。これは痛みを伴う構造改革がおろそかになる懸念もある。過剰な設備や人員を抱える国有企業を再編・淘汰し、民間の活動の場を広げる施策が求められている。
(2019/3/1 05:00)
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