[ オピニオン ]
(2019/3/14 05:00)
歴史とは娯楽や教訓となるものが後世に残ると思っていたが、少し考えが変わってきた。最近の歴史学者がいわゆる“陰謀史観”的な見方に警鐘を鳴らすようになってきたからだ。
勝者が歴史を創るとも言われ、これらを割り引く必要はあるが、当然と思っていた話も最近の研究で否定され始めている。実在の人物が登場する歴史ドラマにも脚色や誇張がかなりある。
例えば、本能寺の変で明智光秀が謀反を起こした理由。宴席の面前で光秀が侮辱されたり、領地を召し上げられたり、もっともらしく描かれている。公家などによる陰謀説もかまびすしいが、いずれも決定的な理由ではないそう。
件の歴史学者によると、そうした話は江戸時代に創作されたケースが多い。講談師などが面白おかしく人を引き付けるため、今の言葉で言えば「話を盛っていた」のだとか。これでは娯楽や教訓に歴史が使われたのであって主客転倒だ。
トランプ米国大統領の登場で完全に定着した“フェイク・ニュース”。話を盛るどころではない。為政者が都合のいい話を歴史に残そうとするのは常とう手段だが、少なくとも、その弊害が世界を混乱に陥れたという教訓は紡げるよう、報道機関としての使命を保ちたい。
(2019/3/14 05:00)