[ オピニオン ]
(2019/3/27 05:00)
「行ってらっしゃい」。JR北海道の石勝線夕張支線の夕張駅で、列車が動きだすとホームにいた中年の女性数人が、黄色いハンカチを振って、見送ってくれた。夕張支線(夕張―新夕張)は3月31日をもって廃線となる。
記録や記憶にとどめようと、休日の車内は満員だった。中年男性がビデオカメラで撮影している。保育園児ぐらいの子どもが10人ほどいてにぎやかだ。駅では、鉄道マニアがカメラを構えてシャッターを切っていた。
夕張支線の開業は1892年(明25)。夕張炭山の石炭を輸送する目的で敷設された。石炭産業の隆盛期には活況を呈したものの、石炭産業の衰退や自動車の普及で乗客が大幅に減少。18年3月に北海道夕張市とJR北海道が廃線に合意した。
人口減少が進む中、広大な線区を抱えるJR北海道の経営は厳しさを増している。10路線13線区を「単独では維持困難」として5区間で廃止・バス転換を提案。夕張支線を含む2線区で地元自治体と廃止を合意した。
線区の廃止は単にJR北海道の経営問題だけでは収まらない。今後の地域公共交通網のあり方としてとらえるべきだろう。望ましい公共交通網とは何か。人口減少のインパクトを踏まえた構想が求められている。
(2019/3/27 05:00)