[ オピニオン ]
(2019/3/28 05:00)
北九州市門司区にある門司港駅の保存工事が終わり、6年半ぶりに復元した姿が観光客らの目を楽しませている。創建は大正3年(1914)。日本の駅で初めて重要文化財に指定された優美な姿は、鉄道ファンに人気が高い。現存する駅舎が国の重要文化財に指定されているのは、ほかに東京駅だけだ。
門司港は古くから交通の要衝だった。明治22年(1889)に国の特別輸出港に指定されて以降は、横浜や神戸と並ぶ港町として栄えた。有名なのはバナナのたたき売りだ。陸揚げしたバナナをいち早くこの地でさばいたのが始まりで、それまで高級果実だったバナナが庶民に普及する端緒となった。
産業界とも縁が深い。三井物産が建設した宿泊・社交場「旧門司三井倶楽部」は国の重要文化財に指定されている。また、出光興産や山九がこの地から飛躍した。
ただ平成の30年間は、北九州市の衰退に歩を合わせるよう輝きを失った。しかし近年、外国人観光客の増加で輝きを取り戻しつつある。インスタ映えを求める国内外の観光客が、レトロモダンな景色を求めて駅や周辺エリアに集まっている。
平成の最後に化粧直しを完了した門司港駅は、文字通り九州の玄関口としての扉を再び開いた。
(2019/3/28 05:00)