[ オピニオン ]
(2019/4/12 05:00)
イノベーションによって社会課題の解決を目指す日本独自のコンセプト「ソサエティー5・0」が打ち出されてまもなく3年―。その世界観を具現化するプロジェクトが近く始動する。実証を通じて得られた知見を官民が共有し、実現を阻む制度改革につながることを期待する。
茨城県にある筑波大学を中心とする一帯で、次世代の自動車交通基盤のあり方を探るプロジェクトが2019年度に始まる。例えば、人工知能(AI)を活用した交通流制御は、交通事故ゼロや渋滞解消につなげる狙いがある。さらにその先には、高齢化社会を見据えた移動革命や医療サービスの充実、総延長7キロメートルに及ぶ地下の共同溝を活用した水素エネルギー拠点の構築など移動にとどまらず、街づくりやエネルギー問題の解決につながるテーマも少なくない。まさに最新技術で社会課題を克服した未来社会の姿を目指している。
プロジェクトの中心となるのは、筑波大学とトヨタ自動車によって17年に設立された「未来社会工学開発研究センター」。トヨタ自動車の内山田竹志会長は、かねてよりソサエティー5・0の実現には、個社だけでは取り組めない協調領域の戦略的な明確化や分野横断的な本格的なオープンイノベーションの必要性を訴え続けてきた。一連のプロジェクトは、こうした問題意識を反映させたものであるだけに、社会ニーズを踏まえた研究開発が加速するとみられる。
イノベーションを原動力に、活力ある未来社会を実現する上で、長期的な協調領域の視点が求められるのは民間だけではない。政府も同様だ。ソサエティー5・0が包含するテーマは多岐にわたるため、省庁や法制度の壁を乗り越え、必要な施策や規制改革にどれだけ踏み込めるかがカギとなる。だからこそ、一連のプロジェクトには関係省庁や自治体など「官」側の人材が積極的に参画するべきだ。
現行制度が抱える矛盾やニーズとのギャップといった「現場感」を官民の間で共有することが、未来社会を切り拓く一歩となるはずだ。
(2019/4/12 05:00)
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