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4月18日は「発明の日」 製造業における知財活用の事例

(2019/4/29 05:00)

業界展望台

特許をはじめとする知的財産は企業の競争力を決定づける重要な要素の一つ。知的財産を活用することで、市場シェアの確保、参入障壁の構築、高付加価値化、資金調達、信用性向上など、経営に多様な効果をもたらす。その活用の方法は、置かれている経営環境やビジネスモデルによってさまざまだ。技術力を競争力に変える知財をどのように活用しているのか。製造業2社の知財戦略を見た。

ナブテスコ IPランドスケープ活用 他社技術を分析

ナブテスコは市場シェアの高い製品を多く抱えており、産業ロボット用の精密減速機は世界シェア6割を獲得している。

同社はコア価値の強化と獲得を重視している。同社におけるコア価値とは競争優位のことで、製品に関する技術やアイデア、設計・製造ノウハウ、営業情報など有形無形の知的財産が含まれる。

同社は社内カンパニー制を採っており、定期的に各カンパニーがシートを基に自ら評価を行い、自らの強みが何であるかを棚卸しする。これによりカンパニーごとにコア価値を定義し、その獲得・強化のための事業計画を年単位で策定する。計画策定の上で重要なのは、顧客ニーズや技術動向、プレーヤーの状況を把握することだ。

  • 会社の発展や事業拡大に貢献した発明に対し、優秀発明表彰を行っている

同社はこれらを把握するために、IPランドスケープを活用している。IPランドスケープとは、どの企業がどのような特許を持っているかを俯瞰(ふかん)的に分析・把握し、その情報を経営・事業戦略に生かすというもの。特許情報をグラフや図で可視化した、分析ツールを用いる。

同社知的財産部は各カンパニーが事業戦略を策定する際、カンパニーが持つコア価値が有効に機能する市場を見定め、その市場の顧客の事業活動やニーズを分析している。さらに競合他社の事業活動の状況、仕入れ先や提携先の技術開発動向を調査・分析している。

技術本部知的財産部の菊地修部長は「顧客の製品の変遷を特許出願からたどることで、出願時点での技術開発戦略や今後の事業展開が予測できる」と話す。分析結果はカンパニー社長を含めた幹部と共有し、事業戦略や開発テーマの提案や見直し、今後の事業計画の再考、知財戦略の更新に役立てている。

新事業の探索も行っている。顧客のユーザーや事業連携会社の技術課題・ニーズを分析することで、同社の製品を用途拡大できる分野の探索、その適用のために必要な仕様変更・機能拡張の内容が洞察できる。さらに「M&A(合併買収)の候補や事業連携が可能な企業の探索も行っている」(菊地部長)という。

このような知財活動を2014年度から行った結果、ナブテスコグループの売上高は1.64倍に増加した。緻密な特許情報解析とそれに基づく知財戦略が、高シェア実現につながっている。

ユーグレナ オープン&クローズ戦略 新たな市場開拓

ミドリムシを原料に食品や化粧品、バイオ燃料の開発・製造を行うユーグレナ。同社は2005年の創業当時からオープン&クローズの知財戦略をとっている。

  • ミドリムシを使用した食品「ユーグレナの緑汁」(ユーグレナ提供)

同社は世界で初めて屋外でミドリムシの大量培養に成功した。培養液に工夫するなどして、ミドリムシ以外の生物が増えにくい環境を作り、ミドリムシを大量に培養する方法を発明した。この培養法はノウハウとして秘匿している。

特許出願すると発明の内容が公開されるため、他社に技術を模倣されるリスクが伴う。生物のように完成品を見ただけでどのように製造されたか想像できないものの製造方法は、侵害されても発見しづらい。そのため、自社内で技術をノウハウとして管理し、情報流出を防ぐ方法をとることが多い。

同社では、秘匿するべきコア技術が生産工場内のどこにあるのか、一部の人しか知らない。培養の全工程を知る人も一部に限定することで、技術の流出を防いでいる。

ミドリムシを粉末にするまでの工程はノウハウとしているが、食品や化粧品、燃料にするための技術は積極的に特許を取得している。バイオ燃料の分野では、ミドリムシの品種改良技術、分離濃縮技術、発酵技術のほか、生産過程で必要な要素技術について特許出願している。また、今後生産拠点を構える可能性のある世界14カ国に、バイオ燃料生産のための基本技術を特許出願している。

食品の分野では、用途特許を中心に権利化を進める。用途特許とは、既存の化合物に未知の属性を発見し、それが新たな用途に使用できることが分かった際に、用途に対して与えられる特許のこと。

ミドリムシ特有の成分「パラミロン」は、アトピー性皮膚炎の症状緩和、腸内環境の改善など、疾病を抑制する効果があるという。同社はミドリムシの新たな機能性を研究し、用途発明を行っている。これらの機能を生かした食品を開発し、機能性食品の市場でさらなる展開を目指す。

経営戦略部の若原智広部長は「競合はミドリムシをつくる企業ではない。ほかの健康食品や化粧品のメーカーだ」という。今後もミドリムシの持つ可能性の探究は続く。

【業界展望台】発明の日特集は、5/1まで全7回連載予定です。ご期待ください。

(2019/4/29 05:00)

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