[ オピニオン ]
(2019/5/10 05:00)
合意への期待が高まっていた米国と中国の貿易協議に突然、暗雲が漂ってきた。米国のトランプ大統領が2000億ドル相当の中国製品に対する関税を10%から25%に引き上げると表明した。こうした中、米中閣僚級協議が米ワシントンで9日始まった。中国の出方が焦点となる。米中貿易協議の先行きは極めて不透明だ。米中貿易摩擦が長引くという最悪の事態を想定したうえで、日本は欧州連合(EU)やアジア諸国などと連携して、世界貿易のグランドビジョンを描く時期にきている。
トランプ大統領が強硬姿勢なのは、大きく分けて二つの背景がある。一つは、中国に対する米国の危機感だ。中国との競争を世界の覇権争いと捉える見方は依然として根強い。ただ、それだけではなく、自由民主主義の価値観を含めた米国社会を守るための防衛戦であるという考え方が台頭し始めた。貿易戦争は、中国との競争をしかけるきっかけに過ぎないとの見方もある。
もう一つは、2020年の米大統領選に向けたトランプ大統領の再選への戦略がある。単純に考えれば、対中関税の引き上げは米国経済に打撃を与える。トランプ大統領誕生に貢献した大豆などを栽培する米国中西部の農業州では、対中輸出で甚大な影響を受ける可能性が大きい。しかし、トランプ大統領の今回の判断は、米国経済が中国との貿易戦争に耐えるほどの好調さを維持しているだけでなく、対中政策を強硬に進めるほど、来年の大統領選挙を有利に進められると判断したのではないか。
現在、トランプ擁護とトランプ反対の二つの陣営に大きく分かれている米国では、トランプ大統領が超党派で支持を受けているのは、対中強硬策のみだ。
「米中の争いは、文明の衝突と捉えるべき」―。日本総合研究所の呉軍華理事はこう強調する。それほど深刻な事態で、米中協議が早期に決着するという淡い期待を抱くべきではないと見る。日本は米中協議が長期化する可能性をふまえて、産学官が一体となって、世界貿易の総合戦略を描くべきだ。
(2019/5/10 05:00)
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