[ オピニオン ]
(2019/5/13 05:00)
トヨタ自動車とパナソニックは住宅部門を統合、新会社を発足し街づくり事業に乗り出す。「移動」「暮らし」という両社の得意分野をIoT(モノのインターネット)で結びつけ、新たな価値の街をつくるものだ。国が進めるスマートシティーの概念に沿っており、インフラ輸出の面からも期待できる。同時に、わが国は多くの住宅問題を抱えており、新会社はその処方箋を示せるのか注目したい。
国内の住宅市場の先行きは厳しい。住宅着工戸数は減少する一方、空き家問題は全国的な課題だ。地方ではシャッター商店街、買い物難民など街の荒廃が止まらない。背景には少子高齢化と一極集中の流れがあり、これらを劇的に変えることは現実的ではない。しかし、地方都市が独自の魅力を備えて街を再生し、人を呼び込むことは可能だ。そんな仕掛けの付いた街づくりを行うのが新会社の狙いだ。
例えば、太陽光で発電した電気を地域で共有し、そのエネルギーで自動運転バスを走らせ、高齢者も無理なく移動できる循環型のコミュニティー。インターネットを利用して街全体を警備し遠隔医療なども行える。もちろんテレワークやSOHOなど職場を生み出すことも可能だ。そんな日々の生活を一変するような大胆な発想が、新しい産業をも生み出すだろう。
パナソニックは神奈川県藤沢市でサスティナブルスマートタウンの実績があり、これにトヨタが進めるCASE(コネクテッド・自動運転・シェアリング・電動化)技術を融合するだけでも大きく進化しよう。新会社の「プライム ライフ テクノロジーズ」には、トヨタホームとその子会社のミサワホーム、パナソニックホームズなど5社が移管し三井物産も出資を検討している。トヨタの住宅事業は40年以上前に、豊田章一郎名誉会長の「人々の暮らしを変える」という強い思いで生まれたものだ。新会社はスケールメリット以上にどんな価値を提供し暮らしを変えるのか。そして2社の世界的ブランドと技術の標準化ができれば、インフラとして街づくりの輸出も可能になる。
(2019/5/13 05:00)
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