[ オピニオン ]
(2019/6/13 05:00)
今回で19回目となる「2019年版ものづくり白書」では、平成時代を通じた日本の製造業の変遷を分析した。
白書の刊行当時には、新興国の製造業の急成長を背景に産業空洞化への危機感が強かったが、近年では一部に国内回帰の動きも見られる。またリーマン・ショックごろを底に、国内総生産に占める製造業の比率が上昇に転じている。多くの困難に直面しているものの、部品・素材などでは強みを発揮している。足元では人手不足が深刻化していることなどを記述している。
振り返りとしては、妥当な内容と言えよう。ただ、白書が製造業の今後の方策を示すためには、いささか物足りない印象がぬぐえない。
新興国の製造業は、安価な人件費を武器に日本から“世界の工場”の地位を奪っただけではない。日本のエレクトロニクス産業はデジタル化の変化についていけず、巨大なマーケットを獲得し損ねた。その結果、日本全体が「自動車“一本足打法”になっている」と経済産業省幹部は危機感を吐露する。
製造業の伸び悩みと収益の悪化が、近年、相次いでいる品質トラブルの背景にある。産業界は、従来型の優れた量産技術による「高品質・低価格」の製品戦略が海外で通用しなくなっていることを実感しており、それに代わる戦略やビジョンを渇望している。「ソサエティー5・0」の実現を産業界から政府に働きかけているのも、この認識があるからだ。
かつて日本にモノづくりで惨敗した米国が、いかにして復活の道を切り開いたか。そうした分析と政府レベルの戦略が必要なのではないだろうか。第4次産業革命も、生産性向上や合理化ツールではなく、産業構造の革新につながる動きとして推進すべきだろう。
日本の製造業が今も、部品・素材分野で強みを維持していることは頼もしい。しかし、その強さに安住せず、弱さを克服する道を探らなければならない。政府は課題解決を企業まかせにせず、そうした姿勢を打ち出してほしい。
(2019/6/13 05:00)
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