[ オピニオン ]
(2019/6/17 05:00)
中国の鉄鋼業界で再編の動きが強まってきた。粗鋼生産量で世界2位の中国宝武鋼鉄集団が、同16位の馬鋼集団を子会社化することが決まった。宝武鋼鉄・馬鋼連合は同7位の鞍鋼集団とも、経営統合に向けて協議中だとされる。中国勢を含めて規模拡大を進める世界の強豪に対抗し、厳しい国際競争を勝ち抜くための強固な事業基盤づくりを、日本の鉄鋼メーカー各社も急がなければならない。
世界鉄鋼協会の調べによると、宝武鋼鉄と馬鋼の2社を合わせた2018年の粗鋼生産量は8707万トンに達し、9642万トンで首位に立つルクセンブルクのアルセロール・ミタルに迫る。ここに鞍鋼が加われば、年産1億トンを超す世界最大の鉄鋼メーカーになる。
中国に限らず世界の鉄鋼業界では、ミタルがイタリアの鉄鋼大手を買収するなど再編の動きが活発だ。日本の鉄鋼各社もM&A(合併・買収)投資に力を入れているが、最大手の日本製鉄でも年間粗鋼生産量は5000トン弱にとどまる。積極的なM&Aで規模拡大を続ける世界の巨大鉄鋼企業に、どう対抗していくかが問われる。
日本勢は自動車用の薄鋼板や油井管用の継ぎ目なし鋼管など、高品質・高機能の製品を得意とする。だが、これら付加価値の高いモノづくりは難易度が高く、製造設備に大きな負荷を与える「もろ刃の剣」となる。近ごろ多発する設備の故障やトラブルの一因ともされている。
各社はまず、世界をリードする高付加価値型のモノづくりを危うくする故障やトラブルの抑止に、万全を期す必要がある。大きな負荷に耐えられる強靱(きょうじん)な製造基盤を整え、安定稼働・安定生産に努めなければならない。生産ラインが高水準で安定稼働すれば、汎用品のコスト競争力も高まり、世界市場で優位性が増すに違いない。
国内でもこの間、各社の生産トラブルから一部の鋼材で品薄感が強まり、鋼材輸入が増える傾向にあった。こうした事態を防ぎ、品質、コスト、安定供給のすべての面で日本の鉄鋼業の真価を世界に示してほしい。
(2019/6/17 05:00)