[ 機械 ]
(2019/7/25 05:00)
【アマダ/高速パンチ・ファイバーレーザ複合マシン EML―AJシリーズ】
中身も大事だが、見た目も大事―。「第49回機械工業デザイン賞」を受賞した18製品は、最先端の機能や使いやすさはもちろんのこと、見た目の美しさやシンプルな外観が際立っている。これら優れたデザインを生み出した各社の取り組みを紹介する。(18回連載)
金属板を切断するレーザー加工機は、生産性の高いファイバーレーザーが全盛だ。本格的な活用開始からまだ10年ほどだが、主流だった二酸化炭素(CO2)レーザーに代わり、市場を席巻。しかし、切断箇所のきれいさはCO2方式に分があるとされ、精度、品質要求が一段高い精密板金市場で、CO2方式への支持は根強い。
アマダの山梨貴昭上席執行役員は「高生産のファイバーレーザーに置き換わらなければ、日本はコスト競争力で負けてしまう」と危惧する。高生産で高品質のファイバーレーザー複合機の開発は、業界最大手である「アマダの使命」(山梨上席執行役員)と言う。
複合機は工具(パンチ金型)とレーザーを併用する機種で、国内の精密板金市場で使われることが多い。開発陣は、ベストセラーのCO2レーザー複合機をベースに加工品質に影響する光学系、アシストガス周りの設計を「1から見直した」(平沢泰介ブランク開発部長)。
光学関連ではレンズを新設計。広がる性質のある光を絞りつつ雑光を抑えるため、特殊な非球面レンズを完成させた。加工物に吹き付けて加工しやすくするアシストガスは、噴射部、さらに内部の配管穴まで手を加え、ガスの流れを整えた。
結果、ファイバーレーザーでCO2方式と同等の品質を実現。従来のファイバー機に比べ、面粗さは32%改善、加工時に発生する溶融物の付着(ドロス)の高さは67%もの大幅低減を果たした。
飛躍的な成果の背景には「総当たり的なテスト」(宮渕城之ブランク加工技術部副部長)があった。加工品質の良しあしは噴射口の大きさ、ガスの種類や圧力、光、材料の種類、厚さなど複数の要因が絡み合う。ガスの整流化は解析ソフトウエアが効果的だったが、多くの要因の条件を一つひとつ変え、実加工して試すという根気のいる作業があった。
初期段階で専任チームが半年、第2段階では増員し、さらに半年かけ形にしていった。(編集委員・六笠友和)
(2019/7/25 05:00)