[ 機械 ]
(2019/7/26 10:00)
ネジは最も種類の多い機械要素の一つで、日常生活において欠かせない存在。特に精密・特殊ネジ類は精密電子機器や自動車、医療機器だけでなく、橋梁などの大型建築物でも活躍している。ネジ関連メーカーでは製品本来のニーズにとどまらず作業環境の向上やそれぞれの用途に見合った作業効率に応じた製品の提供を強めている。また医療関連市場への販路拡大が進む。これからの次世代技術や製品展開の流れに合わせ、さらなるニーズに応えるモノづくりへ精密・特殊ネジの存在が発揮される。
作業環境効率・省力化に貢献
身近な基礎部品
ネジは社会インフラから日常生活まで身近な基礎部品として幅広く使われている。特に精密・特殊ネジでは、パソコンなどの電子機器やカメラ、橋梁などの大型の建築物で活用され、製品の機能や品質、安全性を支える重要な役割を担っている。ネジのニーズには軽量・小型化、高強度、高耐食、緩み止めなどがある。こうしたニーズに応える一方で、メーカーでは作業環境の向上をもかなえる性能を兼ね備えた製品展開を強めている。人口減少の影響により人手不足が慢性化していく。そのため製品本来の品質に加え、熟練した技術を必要としない、設計すれば容易に作業が行える部品へのニーズが一層求められるからだ。
あるナットメーカーでは、クリップ金具とナットを一体にした製品を販売している。クリップで取り付け部材に挟んで固定し、高速道路の防音壁や高所の施工現場など、手が届かない現場での作業効率化を可能とする。また機械の稼働を円滑にするベアリングに対応したナットを販売。シャフトのキー溝加工や歯付き座金を不要とし、取り付けも熟練した技術による微調整を必要とせず、簡単に行える。これにより作業工程や部品の削減に貢献している。
成長市場への開発進む
ロボ・医療へ
医療分野などの成長市場に向けた製品も開発が進む。あるメーカーでは、耐熱性に優れたスーパーエンジニアリングプラスチックを使用した高精度すべりネジを開発した。自社独自の技術により熱処理加工のバックラッシュ(がたつき)の発生を抑え、樹脂で難しかった精度を実現した。これにより滑らかな動作を可能とし、ロボットや医療関係への販売を見込んでいる。
また別のあるメーカーでは独自の成形技術を用い、強度とじん性を兼ね備えた高強度純チタンネジを開発。合金チタンと同程度の引っ張り強度を可能とし、医療分野のほか航空宇宙や福祉器具、化学設備などの用途で活用される。
ネジメーカーの主要な需要先である自動車市場では電気自動車(EV)などの次世代自動車の普及に向け、自動車部品の少量化、軽量化のニーズが高まっている。精密ネジメーカーにおいても小型ネジの生産を増加する動きがある。あるネジの検査装置メーカーでも小型ネジの検査装置の受注増加が見受けられている。
低価格で提供
そのネジ検査装置メーカーではよりユーザーの使用目的に合わせた設計を取り組んでいる。例えば検査装置に付属するカメラを一部削減するなど機能を必要なものに限定。製品コストを低減し、低価格で製品の提供を始めている。そのベルト式検査選別装置では、選別したネジをより分ける際に不良品を下に落とす構造を採用。他社製にあったエアでネジを飛ばした際に跳ね返って良品に混入するリスクの低減を図った。
次世代自動車の普及への動きや人口減少による労働者不足を補う省力化への取り組みが進んでいる。それにより精密ネジに必要とされる機能も変化していく。
だからこそ、精密・特殊ネジにおいてこれからの社会をにらんだ製品、技術開発が問われている。
(2019/7/26 10:00)