(2020/1/13 05:00)
2020年の米国経済は、米中貿易摩擦に加えて中東情勢が新たな波乱材料となり、見通しがきわめて難しい。ただ、これらの要因が景気後退にまで発展しなければ、個人消費を中心に引き続き底堅く推移し、潜在成長率を上回る2%程度の成長率を維持するとみられる。
19年は米中貿易摩擦が生産や輸出を冷え込ませる一方で、米連邦準備制度理事会(FRB)が景気下振れリスクに対する予防的な利下げを繰り返した。このため低金利が持続されて良好な雇用環境が続き、個人消費を支える結果となった。
年末には中国との通商協議で第一段階の合意が行われ、米国が追加関税の発動を取り下げたため、米中貿易摩擦の懸念が薄らぎ、明るい経済環境下で新年を迎えた。
今年も基本的にはこうした雇用・所得環境が続き、企業の景況感が上向いて、低迷していた設備投資にも弾みがつくことが予想される。今年最大のイベントは11月に行われる大統領選挙。景気悪化は再選の妨げとなることから、トランプ大統領は景気対策に全力を尽くすのは間違いないだろう。
すでに景気拡大局面は125カ月を超え、7月には12年目と突入する。これをさらに長期化できるかどうかは、ひとえにトランプ大統領の選挙対策にかかっている。
もし、トランプ大統領が対中貿易赤字削減を念頭に再び中国への強硬策をとったり、イランへの軍事行動に出たりすると、世界経済が減速して輸出や生産が減少し、景気が後退するおそれがある。景気後退は選挙戦で不利に働くが、支持者の中には中国やイランに対して厳しい態度で臨むことを求める強硬派もおり、予断は許されない。
日本にとっては米国経済の好調が景気を下支えする要因となるため、米中貿易摩擦も中東情勢もさらに好転することが望ましい。政府は他の先進国などと連携して、自由貿易推進のために行動するとともに、中東情勢の正常化に向けて各国に働きかける外交努力を果たしてもらいたい。
(2020/1/13 05:00)