(2020/6/8 05:00)
再生可能エネルギーの導入を進めるためにも、追加負担の規模を示す必要がある。
政府の2020年版エネルギー白書は、エネルギーシステムの強靱(きょうじん)化と、パリ協定の運用開始に伴う脱炭素化に焦点をあてた。産業界にとって重要なのは、低コストのエネルギーを安定して供給できる体制と脱炭素社会の両立だ。
このうちコストについて、白書は実質的に将来の負担増を予告している。再生エネを大量導入するためには、既存の電力ネットワークを次世代型に作り替えていかなければならない。政府は再生エネ賦課金方式にならい、電気料金に上乗せする形で巨額の資金を調達する方法を検討している。
また日本の再生エネの主力である太陽光発電については、廃棄に備えた積立制度を導入する方針。発電事業者にとっては新たな負担であり、電気料金への影響は避けられない。
ただ白書は、こうした再生エネの追加負担の規模を明示するには至らなかった。地球環境問題のために必要なコストであっても、国民生活や企業の経済活動を過度に圧迫することは許されない。適切な情報開示と、しっかりとした議論に取り組んでもらいたい。技術開発による再生エネの低コスト化や、一層の省エネなどのイノベーションの加速も重要だ。
一方、安定供給についての白書の分析は新味を欠くと言わざるを得ない。資源輸入国である日本にとって、供給源の多様化は永遠の課題。産業界は、燃料備蓄に適した原子力が電源として十分に機能しない現状を疑問視している。政府は、その疑問に向き合ってほしい。
また新型コロナウイルス感染症による「ニューノーマル」や世界経済の急速な悪化が、エネルギー供給と消費に及ぼす影響は不透明だ。次年度以降の白書の分析に期待したい。
再生エネの主力電源化の推進は関係業界のみならず、日本にとって国民的な課題だ。政府が指導力を発揮するためにも、これまで以上にきめ細かな情報提供を望む。
(2020/6/8 05:00)
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