(2020/6/9 05:00)
今年の株主総会を起点に、インターネットを活用した質問や議決権行使などができる「バーチャル株主総会」に向けた議論の深まりに期待したい。
新型コロナウイルス感染症が収束しない中で、株主総会の集中シーズンを迎える。多くの企業が株主に出席を控えるよう要望し、一部企業はネットでライブ配信を行う。濃厚接触を避ける「3密」対策として、ライブ配信は現実解だが、株主との対話という観点では課題は残る。
バーチャル株主総会は世界的な潮流で、米国ではすでに300件程度が実施され、9割近くがインターネットのみで完結しているという。これに対し、わが国では経済産業省がリアルな会場での開催を前提とする「ハイブリッド型」としてバーチャル株主総会を定義し、2月に実施ガイドラインを示した。
バーチャル株主総会を「出席型」と「参加型」に分け、出席型は総会で質問ができ、当日ネット上で議決権行使も可能。参加型は議決権行使も質問もできない。コメントは可能だが、企業側の回答義務はなく、出席型に比べると、制約が多い。
今回の総会は参加型の一種としてライブ配信のみ行い、コメントも受け付けない企業が多い。議決権は従前同様、事前に書面かネットで行使する。
経産省のガイドライン策定にかかわった沢口実弁護士は「主催企業にとって、出席型か参加型かで大きな違いがあるが、株主からみると、大きな差異はない」と指摘する。議決権の方向性は通常、総会開催日までにほぼ内容を固め、会場では拍手で了承とする。委任状争奪戦をはじめ、懸案事項がある場合を除けば、開催日の賛否に左右されることはない。
一方で企業がバーチャルな手だてを提供する意義を、沢口弁護士は「総会への出席を抑制する代替手段として、会社の姿勢を示すにはよい」と語る。
総会のネット利用は、遠隔地や海外在住など幅広い株主が参加できるなど利点も多い。まずはライブ配信を出発点とし、ネット活用の付加価値向上へ機運を高めたい。
(2020/6/9 05:00)
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