(2020/6/10 05:00)
個人を特定できる情報の不正利用防止と利用促進を狙った改正個人情報保護法が成立した。2年以内に全面施行する。企業はルールを厳守し、ビジネス利用を積極化したい。
個人情報保護委員会の年次報告によると、個人情報の漏えい件数(5万人超)は、2018年度に29件と17年度(13件)に比べ倍増した。現行法では、漏えい発生時の委員会への報告や本人への通知は努力義務だが、改正後は漏えいが一定人数を超えた場合、義務になる。
個人を識別できないデータでも、第三者に提供すれば個人を識別可能となることが想定される場合は、あらかじめ本人の同意取得を義務づけた。ネット上で閲覧履歴を記録する「クッキー」などを活用する場合に適用される可能性がある。
第三者提供により個人情報を授受する際は、提供先や提供元の名称や個人データの項目などの記録を作成し、本人からの開示請求に応じなければならない。情報の「使い回し」を抑止する効果が期待できる。
不正に情報を提供・盗用した場合の罰則も強化される。現行法では不正利用の罰金は個人・企業とも50万円以下だが、企業に対しては最高額を1億円に引き上げ、企業名も公表される。
不正防止策を強化する一方で企業によるビッグデータなどの利用を促進するため「仮名加工情報」を新設した。氏名など個人情報に含まれる一部の記述を削除するなどし、他の情報と照合しない限り特定の個人を識別できないように加工して使用できる。社内での分析などに使う場合に限り、本人からの開示や利用停止請求の対象外とした。
いずれも企業活動に大きな影響を及ぼす改正となる。不適正な利用とはどういうものかなど、具体的な運用は今後作成するガイドラインで示される。活用する企業にとって分かりやすいものにしてほしい。
法改正に対応する企業にとって負担は増える。不適正利用を続ける悪質企業が野放しでは、規制強化の意味がない。正直者がばかをみないよう、摘発にも力を入れてもらいたい。
(2020/6/10 05:00)
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