(2020/7/3 05:00)
防犯カメラは事件・事故の発生状況を記録するのみならず、事後の解析による犯人の特定や、防犯カメラの設置・周知による事前の犯罪抑止にも貢献している。近年、より鮮明な映像を録画できる高解像度カメラも販売されており、赤外線暗視やサーモグラフィー機能など、使用シーンに応じた防犯カメラの高性能化が進んでいる。
防犯カメラ高性能化
警察庁発表の「令和元年警察白書」によると、2018年の刑法犯認知件数は81万7338件(うち窃盗は58万2141件)で、前年より9万7704件減少し、過去最少を記録した。街頭犯罪と侵入犯罪は02年をピークに減少傾向の一方、サイバー犯罪の認知件数は年々増加している。
防犯カメラは犯罪抑止につながる一方で、被撮影者のプライバシー保護を図るため撮影記録の管理の取り扱いや、使用目的の明確な表示がカメラ設置者に求められる。
一般的なカメラの撮影画角は90度―100度が主流であり、360度全体を監視するためには4台の設置、配線工事が必要になる。1台で広範囲に監視でき、死角を補う置き方で設置台数やメンテナンスコストを削減できるのが360度対応の全方位カメラだ。
全方位カメラは魚眼レンズのため、視認性が問題だったが画像歪み補正で見やすい映像処理も可能となった。屋内の天井設置の場合、360度全体を監視でき、壁面設置で180度をカバーできる。
赤外線暗視カメラの夜間撮影時に問題となるのが赤外線の照射距離だ。赤外線の照射距離は15メートル程であるが、屋外用カメラでは25―30メートル程。赤外線は光が強いため被写体が接近した場合、白くぼやけ認識が難しくなるハレーションを起こす。
赤外線の光量を自動調整し、ハレーションを抑制することで夜間でも鮮明な映像を撮影できる。また、近赤外光を可視光と同様に特殊カラーフィルターで色分離することで夜間でもカラー映像の撮影ができ、セキュリティー対策も万全だ。
一方、脅威のアプローチは決して外部からだけではない。インターネットを使った遠隔監視が増え、海外では不正アクセスによるカメラののぞき見も報告されている。メーカーが初期値として設定しているパスワードの使用が原因となるケースも発生している。
商業店舗では従業員と顧客間トラブルの記録をはじめ、マーケティングデータの取得や顧客分析用途でのカメラの活用も広がっている。人工知能(AI)を搭載し、来店者の年齢や性別などを識別し、収集データを自動でグラフ化することで客層の可視化につながると注目されている。
また、犯罪や事故の事前抑止を図るAIによる「危険行動予測」では“精度"の確保が課題だ。日本防犯システムは「危険行動の定義の判別が難しく、導入後にうまく使いこなせないなど課題が多い。今後は機器の販売だけでなく、ユーザーの導入の目的や課題解決の策定などソリューション全体に応えていきたい」と意気込む。
(2020/7/3 05:00)