(2020/7/6 05:00)
国民生活や経済活動にも影響が及ぶ政策転換である。政府はエネルギー安定供給をどう担保し、新たなコスト負担の可能性に対応するのか、丁寧に説明していく必要がある。
梶山弘志経済産業相は「非効率な石炭火力をフェードアウトする仕組みを導入する」と表明した。発電効率が低く、二酸化炭素(CO2)排出量の多い旧式石炭火力発電の稼働を抑制する規制を導入する。一方で高効率な石炭火力は、新設も含め運転を認める方針。7月中に有識者会議を開催し、具体的な検討に着手する。
地球温暖化対策を進めるうえで、妥当な方針だ。日本は世界から、温室効果ガスの削減目標で踏み込み不足を指摘され、その要因の一つとして石炭火力発電比率の高さが挙げられていた。経産省は新規制で2030年までに旧式火力100基程度を休廃止させる方針。
忘れてはならないのは安定供給をいかに担保するかだ。日本の発電量のうち、火力発電は32%を占める主力電源。そのうち約半分は休廃止の対象となる。CO2排出を抑制しながら電力需要を賄うには、再生可能エネルギーの主力電源化と、安全が確認された原子力発電の再稼働を着実に進める必要がある。
政府は18年のエネルギー基本計画で、30年の電源構成目標を据え置き、液化天然ガス火力が約27%、石炭火力が約26%、再生可能エネルギーが22%から24%、原子力が20%から22%とした。
再生エネは国の支援策もあり、目標は達成できそうだが、国民負担が増大している。原発は安全対策の実施や地元の理解を得られないことで、発電量が大幅に低下している。再稼働が実現できないまま石炭火力を削減すれば、安定供給はおぼつかなくなる。電力会社の経営にも多大な影響を与えるだろう。
旧式火力の削減という対応だけでなく、国のエネルギー政策の全体像を、強靱(きょうじん)なものへと見直すきっかけと考えるべきだ。中でも、原発の位置付けを明確にし、国民の理解を得る努力に向き合ってもらいたい。
(2020/7/6 05:00)
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