(2020/8/10 05:00)
古河電気工業社長の小林敬一さんは、社長に就任してから常にそばに置いている本が2冊ある。1冊は外山滋比古さんの『本物のおとな論』だ。
「この本を読むまで、社長は元気で明るいことが大事だと考えてきたが、落ち着いた声で話すことや、威張らずに腰が低い人が“おとな”なのだと、納得しながら読んだ」という。
英文学者でエッセイストとしても活躍した外山滋比古さん(96歳)が亡くなった。平易な言葉と短い文体でありながら、物事の本質をつく表現方法は、物書きにとって見習いたいものだ。大学受験の問題に外山さんの作品が多く取り上げられるのもうなずける。
代表作の『思考の整理学』は、初版から25年を経てベストセラーとなった。外山さんはそれについて、「今の若い人たちが、世の中の変化を感じ取っているせいでは」と分析した。日本の教育は、決められたとおりにやれる能力を育ててきたのに、「自ら考える力を持て」と言い出すのは矛盾している、と指摘した。
若者には「本を読むだけでなく、まだ答えの出ていない問題を知るために、新聞を読んで考える力を養ってほしい」との助言も。産業人にも若者にも大きな影響を与えた方だった。
(2020/8/10 05:00)