社説/ドコモ口座が示した教訓 安全確保は事業者の責務だ

(2020/9/16 05:00)

国を挙げてキャッシュレス化に取り組む中で発生した事件だ。サービスを提供する企業は安全対策の不備を反省し、取るべき施策を迅速に進めてもらいたい。同時に個人のセキュリティーへの感度も高めたい。

NTTドコモの「ドコモ口座」を利用して、個人の銀行口座から預金が引き出される事件が相次いだ。ドコモ口座を利用しない人の銀行口座が勝手にひも付けられ、知らない間に預金が流出したことが、問題を深刻にしている。

ドコモは携帯電話回線を提供する既存サービスに加え、金融決済のプラットフォーマーになるという経営目標を掲げ、取り組んできた。利用者獲得を急ぐあまり、安全を低く設定したのであれば本末転倒だ。

ドコモ口座は、メールアドレスで開設でき、本人認証に2段階認証を採用していないなど、セキュリティー対策の甘さが犯罪者に狙われた。銀行側もセキュリティーレベルの低い一部地銀が狙われた。

安全対策に課題のあるサービスが多いのが実情だ。日本電子決済推進機構は、多くの金融機関が参加する決済サービス「バンクペイ」の新規口座登録を停止した。高市早苗総務相は「ドコモ以外の類似サービスでも被害が発生している」とし、国民に注意を呼びかけた。

犯罪者は我々よりはるかに高度な知識を持ち、巧妙にわなを仕掛けてくる。決済サービスを提供する事業者は、自社の安全対策を再点検し、顧客を守る責任がある。

同時に個人の利用者は、銀行口座の暗証番号を定期的に変更したり、電子決済時に求められるID、パスワードを使い回さないなど、個人が取り得る基本的な安全対策を励行してもらいたい。

キャッシュレス決済は現金を持ち歩くリスクを軽減し、小売店などの現金管理負担を軽減するなど、利便性に優れている。日本はこの分野でも世界に比べて立ち遅れている。今回の事件を教訓に安全確保を徹底し、よりよいサービスが提供される環境づくりを求めたい。

(2020/9/16 05:00)

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