(2020/9/23 05:00)
日本生産性本部(茂木友三郎会長=キッコーマン名誉会長)は、2020年に生産性運動65周年を迎えたことを機に、初の「生産性白書」を刊行した。日本企業の生産性の伸び悩みが各方面から指摘される中で、その打開策を模索することは時宜にかなったものだ。
白書は第1部で生産性向上に向けた問題を提起し、今後の生産性運動に向けた提言をまとめている。また第2部ではデジタル化、人材投資、価格形成など生産性向上のカギとなる具体的な論点をとりあげた。
このうち日本の生産性の現状が先進国7カ国中で最下位にあり、イノベーション力の再生やリスクを取る企業風土への転換が求められるという分析は、他の多くの議論に共通するものだ。白書では提言として「経営力の強化」「経営者の育成」を強調した。現在の経営層にとって耳の痛い指摘といえよう。
新型コロナウイルスの収束後に向けた生産性改革は、多くの企業にとって関心の高いテーマである。白書ではコロナによる在宅勤務の効率が改善傾向にあり、従業員の満足度も高まっているという調査結果を紹介。柔軟な働き方を生産性向上に結びつけるべきだとしている。
一方でコロナによるコスト削減が、企業の教育訓練費の削減を招く恐れがあることを指摘。「人への投資こそが生産性向上の源泉」と強調している。
また白書は長期的に各業界で新陳代謝が進み、生産性の高い企業が生き残ることで経済全体の生産性が向上することへの期待を表明した。
とりわけサービス業では、これまでデジタル化を進めてきた企業の利益率が有意に高いとしている。こうした分析は大企業でも市場からの退出を余儀なくされるケースが増えることを示唆している。
日本の生産性の低迷は、失われた20年間の企業経営の行き詰まりの結果である。白書は遠回しの表現ながら、戦略の見直しやトップの世代交代を含む大胆な経営転換の必要性を伝えている。個々の企業が実情に応じてかみしめたい指摘である。
(2020/9/23 05:00)
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