(2020/10/13 05:00)
科学技術における日本の貢献を息長く続けるためにも、若手研究者への支援を充実させるべきだ。
今年のノーベル賞各賞の発表が12日に終わった。3年連続の受賞が期待された生理学医学賞、物理学賞、化学賞の自然科学3分野で、日本人の受賞はならなかった。
ノーベル賞は1901年から始まったが、日本人では1949年に中間子の存在を理論的に予言した湯川秀樹博士が初の受賞者となった。その後、自然科学3分野の日本人受賞者は外国籍の人を含め24人を数える。
自然科学3分野の受賞者は国別では米国が圧倒的多数だが、21世紀に入ってから、日本は2位と成果を上げている。ノーベル賞を受賞する研究成果は10―30年前に生み出されたものであることが多い。人類への貢献を見極めるには一定の時間が必要だからだ。日本においても科学研究が産業をけん引し、豊かな社会を築く好循環を描けた結果とみることもできる。
心配なのは現在の日本の研究開発、とりわけ基礎研究力の弱体化が見られることだ。日本の論文提出数は1年間に7万本強で横ばいが続く。中国に2006年頃に抜かれ、ドイツにも08年頃から差を広げられている。
さらに深刻なのは、将来ノーベル賞候補となり得るトップ10%や1%に入る論文数が00年以降急速に低下していることだ。
その背景の一つに、優秀な若手研究者を育てる環境の劣化があげられる。博士課程を修了しても、採用枠が限られ経済的に自立が困難な、いわゆるポスドク問題が発生。博士課程に進む一般学生数が15年前に比べて4割減少している。
政府は若手研究者を経済的に支援する制度の創設を決めたが、優秀な研究者を増やすには、安定したポストの拡大も必要だ。産業界も採用において適切な待遇で迎えるよう処遇改善を図ってもらいたい。
資源に乏しい日本にとって、「知」こそが最大の資源である。研究開発の裾野を広げるために、資金と人材の確保策が早急に求められる。
(2020/10/13 05:00)
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