(2020/10/15 05:00)
エネルギーの安定供給と脱炭素を両立させながら、コスト低減を図る。難しい課題へ挑戦するには、イノベーションの加速が欠かせない。
経済産業省はエネルギー基本計画の見直し作業に着手した。2030年度の電源構成が最大の改定項目となるが、その手法として2050年のあるべき姿を描き、30年の目標を策定するバックキャストを採用する。
電力事業にとって30年はごく目先であり、現状からの積み上げに終始する懸念があった。50年に脱炭素を実現するなどの大きな目標を掲げたうえで30年を考えれば、取り組むべき施策が明確になり、企業の開発や投資への予見可能性も高まる。
課題はたくさんある。日本のエネルギーの基本方針は、安全と安定供給、経済性、環境を兼ね備えた「S+3E」。しかし、世界は自国第一主義や中東情勢が不安定化するなど、エネルギー安全保障が揺らいでいる。エネルギー自給率が11・8%(18年度)の日本にとっては看過できないリスクである。
脱炭素への取り組みは、気候変動による災害の増大で一層加速している。日本の電源に占める化石燃料の比率は、18年度時点で77%(うち石炭火力は32%)と極めて高い。政府は非効率な石炭火力を休廃止する方針だが、より踏み込んだ削減に取り組まねば、世界の潮流から取り残される懸念が生じている。
自給率拡大と脱炭素には、再生可能エネルギーの主力電源化を推進しつつ、安全性が確認された原子力発電所の再稼働が最低限必要だ。原発のリプレースも着実に進める必要がある。
2050年を見据えれば、水素の利活用や炭素リサイクル、安全性の高い小型原子炉も有力な手段となり得る。中でも水素は日本が先行するが、欧州がより大きな導入目標を掲げて追い上げている。関連産業の国際競争力に直結し、負ければ日本は高コストな電気を使い続ける事態ともなる。
目指すべき方向を定め、イノベーションによる課題解決をはかるには何が必要か。大きな視点に立った議論を期待したい。
(2020/10/15 05:00)
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