(2020/12/4 05:00)
スタートアップが事業連携先の大企業から優越的地位を利用して不公正な扱いを受ける事例が後を絶たない。技術革新や雇用創出を促すため公正で自由な競争環境の整備を加速したい。
2008年のリーマン・ショック以降、低迷していたスタートアップへの出資は14年ごろから増加に転じた。近年は大企業のオープンイノベーションが活発化する中で高い伸びを示す。
だが公正取引委員会がまとめた「スタートアップの取引慣行に関する実態調査報告書」からは、スタートアップが資金面で弱い立場にあるため、不公正な扱いを受けても泣き寝入りするしかない実態が浮かび上がる。
全体の約17%(242社)が連携事業者や出資者から納得できない行為を受けた経験があると回答。具体的には「秘密保持契約(NDA)」(約31%)、「出資契約」(約27%)、「ライセンス契約」(約23%)に関する案件が上位にきている。
連携事業者がNDAに違反しスタートアップの秘密情報を使ってスタートアップと同様のサービスをはじめ、競合相手になるといった悪質な事例もある。
こうした大企業には法令順守を徹底するよう求めたい。また事業連携の中には、NDAを締結していないずさんな事例も散見される。法務担当部署が契約内容を精査し、独占禁止法が禁じている「優越的地位の乱用」などに該当しないか確認の上で事業連携を進めてほしい。
一方で、スタートアップも社内に法務担当者を置く余力がなければ、社外の専門家を活用したり、他のスタートアップと情報共有を強化したりするなど防御策を講じておきたい。
公取委は独禁法の考え方に基づき、20年度中に経済産業省と連名で、問題事例や対応策を整理したガイドラインを作成し、不正行為の防止に努めていくことにしている。
新型コロナウイルス感染症の長期化に伴う景気悪化で、資金繰りが厳しさを増すスタートアップもある。行政機関にはスタートアップのための相談窓口開設や弁護士相談費用の補助など実効性のある対策を期待する。
(2020/12/4 05:00)
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