(2020/12/7 05:00)
夜空を貫いたひと筋の火球に、日本の科学技術の輝きを見た思いがする。
日本の小惑星探査機「はやぶさ2」の再突入カプセルが6日未明、地球に帰還した。関係者の努力に敬意を表したい。カプセルは落下目標だった豪州南部の砂漠で回収され、軌道制御技術の正確さを示した。日本に持ち帰った後、小惑星リュウグウで採取したとみられる試料の有無を確認する。
相次ぐ不具合に苦しみ、地球帰還そのものが「奇跡」と呼ばれた初代「はやぶさ」に比べ、2代目の活躍は順調だった。目的地・リュウグウの地表が予想外に岩だらけだったにもかかわらず、2度のタッチダウンを成功させた。小型表面探査車の投下や人工クレーターをつくる衝突実験など、予定された他の任務も着実にこなした。
それは失敗の教訓を次に生かし、成功を導くという日本のカイゼン活動を思わせる。「はやぶさ2」も、不具合や事故に備えた機構を搭載していたと聞く。だが「こんなこともあろうかと…」という非常措置は発動されなかった。
宇宙開発は一国の科学技術力を象徴する。「はやぶさ2」が内外から注目されるのは、微小重力の小惑星からの無人サンプルリターンにおいて世界をリードしたからだ。探査が順調に進んだこと自体が偉業といえる。
責任者である宇宙航空研究開発機構(JAXA)の津田雄一プロジェクトマネージャは「1号機を超える探査機を作ろうと思ってやってきた。(2号機の)成功を未来につなげたい」と話す。「はやぶさ2」はカプセル分離後、新たな深宇宙探査に向けて再出発した。
これまでの成功の陰にはJAXAだけでなく、多くの技術と製品を提供したメーカーの存在があったことを特筆したい。JAXAの宇宙科学研究所の国中均所長は「(最先端の技術を実現する)モノをつくるのがJAXAの本来事業」という。目に見える形で目標を達成し、多くの感動をもたらした「はやぶさ2」は、あすの日本の科学技術の道しるべになるはずだ。
(2020/12/7 05:00)