(2020/12/8 05:00)
自動車電動化をめぐる世界市場の将来像をどう描くのか。日本の産業構造に大きな変化を及ぼすだけに、慎重な見極めが必要だ。
経済産業省は2030年代半ばに新車販売をすべて電動車とする方針を固め、関係業界との調整に入った。
政府が掲げる2050年に温室効果ガス排出量を実質ゼロとする目標達成に、自動車の脱ガソリン化が必要と判断した。すでにフランスや英国、米カリフォルニア州などが、ガソリン車の新車販売規制を打ち出し、電動化シフトを鮮明にしていることも政策転換を後押しした。
言うまでもなく自動車はわが国最大の基幹産業である。素材、関連部品、部品加工に不可欠な工作機械、切削工具などサプライチェーンのすそ野は広く、そこで雇用される人口も500万人以上に及ぶ。自動車が世界市場で戦う力を失えば、日本の経済力そのものも低下する恐れがある。世界市場が電動化に進むなら、日本もその中でトップを走り続けなければならない。
経産省は電動車としてハイブリッド車(HV)、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)を想定している。
ガソリンエンジンを搭載するHVは、日本が技術で先行するが、世界がHVを電動車と認めなければ開発の方向を見誤ることになりかねない。FCVは自動車が到達すべき将来像だが、水素ステーションというインフラ整備が欠かせない。EVを電動車の主流とみる国が多い中で、どの技術を磨き市場を形成するかの判断が重要である。
サプライチェーンにおいては、バッテリーやモーター、電子制御機器、半導体などの開発を加速する必要がある。中でもバッテリーは中国が急速に力を付けており、日本はコスト面での競争力の再強化が不可欠だ。一方、ガソリン車向け部品に関連する企業には、業態転換を含めた厳しい対応が迫られる。
電動化は自動車産業の再編を加速させる可能性もある。脱炭素化が経済成長につながる施策となるよう、市場の行方を見通してもらいたい。
(2020/12/8 05:00)
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