(2021/3/22 05:00)
日本の生産性向上を実現する上で、企業全体の99・7%を占める中小企業の改革が最重要課題である。ポストコロナを見据え、構造改革を進める施策を今から強化しておきたい。
政府・与党は今通常国会で、産業競争力強化法と中小企業関連法を束ねた改正法案の可決・成立を目指している。長期的な視点で事業再編やデジタル変革(DX)を促し、中堅企業へと成長させる狙いを込める。
焦点の一つは、中小企業から中堅企業への成長途上にある企業に対する支援の拡大だ。これまで製造業の場合は「資本金3億円以下または従業員300人以下」を中小企業と定義し、製品開発や設備投資などを対象に金利・税制面で優遇してきた。この優遇措置を受けようと企業規模をあえて抑えている企業もあり、中小企業の成長を妨げている側面もあった。
改正法案では資本金に制限を設けず、製造業は従業員500人以下なら政府の中小支援策を受けられる。中小経営者を事業拡大に向かわせる施策と評価したい。
事業再編に向けては、規模拡大のためのM&A(合併・買収)への税制措置、所在不明株の買い取り期間の5年から1年への短縮などを講じる。また大企業と中小企業の取引適正化を推進するほか、中小企業の事業継続に取り組む中堅企業を金融支援の対象に加える。中小企業の足腰を強化しつつ、国内外で競争力を高めた企業が相次ぎ育成されることが期待される。
中小企業対策は、菅義偉政権が掲げる経済政策の柱の一つ。昨秋の政権発足時、中小企業基本法の見直しにまで踏み込み、生産性が低い中小企業の淘汰(とうた)が加速するとの指摘も有識者の一部であった。だが菅政権はこの観測の火消しに走り、昨年末に政府の成長戦略会議が策定した実行計画では「(中小政策は)淘汰を目的とするものでない」との一文を盛り込んでいる。
菅政権の中小政策は事業の「規模拡大」か「継続」への支援となる。前者を加速して日本の低い潜在成長率を引き上げ、新たな成長軌道を描きたい。
(2021/3/22 05:00)