(2021/3/19 05:00)
米テキサス州で2月に発生した大規模停電は、世界の主要産業に大きな影響を及ぼしている。電力安定供給の重要性を再認識すべき事象である。
トヨタ自動車やホンダは、米国内の複数工場のライン操業を数日から10日程度停止させる。トヨタは米南部の石油化学プラントの稼働停止で樹脂材料が調達不足に陥った。ホンダも半導体や素材の調達が困難になったことを停止の理由にあげた。
半導体は世界的なデジタル機器の増産や中国による買い占めで需給が逼迫(ひっぱく)していたのに加え、テキサス州の大規模停電で、現地の半導体工場の操業が停止したことが影響をさらに深刻化させた。半導体不足は今後より幅広い産業分野の操業停止に波及する懸念がある。
ひとたび大規模停電が発生すれば、影響は世界のサプライチェーンに及ぶことが明らかとなった。
テキサス州での大規模停電は、大型寒波の襲来で、気温が氷点下になり、天然ガスのパイプラインや風力発電設備が凍結したことが要因とされる。もともと温暖な気候で、凍結対策が不十分だった人災との批判も上がっている。
日本にとっても決して対岸の火事ではない。1月に寒波が日本列島を襲った時には、大規模停電寸前まで、電力需給は逼迫した。卸電力市場で価格が高騰し、新電力事業者の経営悪化を招いたことも、日米それぞれで起こった。
日本は2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、エネルギー政策の見直し作業に着手している。再生可能エネルギーを主力電源化させる方向に、産業界も異論はない。しかし、太陽光発電や風力発電は、天候に左右される変動幅の大きな電源であり、バックアップ電源をどこまで準備し、そのコストをどう負担するかについても議論をしていく必要がある。
電力需給の変動には特定電源に過度に依存しない電源構成の柔軟性が重要だ。停電は人の命や企業活動に直結する重大リスクである。安定供給重視で議論を進めてもらいたい。
(2021/3/19 05:00)