(2021/3/31 05:00)
半導体の経済安全保障リスクが高まっている。背景には不安定な供給体制や先端技術を巡る米中覇権争いの激化がある。グリーン化・デジタル化の潮流をとらえ、日本の半導体産業の再興に挑みたい。
経済産業省は産学官の有識者による「半導体・デジタル産業戦略検討会議」を立ち上げ、再興策の議論を始めた。米中はじめ各国が重要戦略として育成に力を入れている。このままでは日本が優位に立つ製造装置・素材メーカーの開発拠点まで海外移転が進み、半導体産業全体が空洞化しかねないとの危機感が背景にある。
日本の半導体産業は全盛期の1980年代後半、世界シェアの5割を占めた。それが現在は1割まで低下している。韓国、台湾、中国が公的施策で半導体産業を強化し続けたのに対し、日本の政策が十分でなかったことも衰退の一因だろう。
巻き返しの実効性を高めるには、失敗を教訓として戦略を明確化すべきである。国内に先端ロジック半導体の製造基盤を構築するには海外からファウンドリーの研究開発拠点を誘致し、装置・素材メーカーと共同技術開発を推進することが手始めになろう。しかし工場誘致はハードルが高い。半導体需要を創出する具体策を打ち出し投資の予見性を高める必要がある。
自動車の電動化や再生可能エネルギーの拡大、データセンター誘致などで需要を喚起したい。こうした分野では消費電力の少ない次世代半導体の開発と安定供給がカギになる。日本が強みとするパワー半導体も、技術革新が必要だ。
米中に比肩する巨額の国費投入は難しい。需要側の視点から重点分野を絞り込み、メリハリを利かせた強化策が求められる。設計・開発ベンチャーの育成も重要だ。
単に半導体の国内生産を増やすのではなく、ひとつでも多く得意な分野や製品を持つことが海外勢との連携を容易にし、自国の産業振興につながる。グリーンイノベーションが加速する今後10年は、巻き返しの大きなチャンスである。
(2021/3/31 05:00)
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