(2021/4/15 05:00)
情報通信技術(ICT)による著作権使用の補償金制度が本格化した。オンライン授業などで機能する仕組みだが、著作者の特定は簡単ではない。音楽著作権で見られるような、著作物識別へのデジタル技術の幅広い進展を期待したい。
学校教育の教材となる他人の著作物は、教室内では無償で使えるが、ICT活用では拡散しやすいため有償だ。学校法人や国立大学法人、教育委員会は2021年度から、文化庁唯一の指定管理団体「授業目的公衆送信補償金等管理協会」(サートラス)に、大学なら学生1人年720円などを支払う。
初年度の20年度は新型コロナ対応で0円になり、教育現場がオンライン授業の経験を積んだ上で金額が決まる好ましい展開になった。
この先はサートラスが登録の教育機関のサンプル調査に基づいて書籍や写真、雑誌、新聞などの権利者団体別に分配額を決め、その各団体が著作者・著作権者を特定して分配金を払う。
ところがこの特定が容易ではないという。ウェブで見つけた出所不明の素材を安易に使うケースが、教育現場でも少なくないためだ。補償金を集めても権利者への還元が進まなければ制度の運用はおぼつかない。
サートラスによると解決策の一つに、デジタル技術の開発があるという。具体的には音楽著作権で進むフィンガープリント技術だ。これは楽曲ごとに“電子指紋”を組み込むことで、放送や端末機器で流れる楽曲を識別する仕組み。即時にアルバムやアーティストの名を表示できる利便性とともに、楽曲の使われ方が把握され、著作権管理が容易なのだという。
書籍などもオンライン授業でデジタル化を経ている以上、書名や著者名を特定することは可能なはずだ。写真や絵画などそれぞれの特性に応じたデジタル技術の発展が待たれる。
ニューノーマルの教育ICTでは、ハードのオンライン授業システムや1人1台パソコンとともに、著作権保護の定着も重要だ。時代を切り開く先進技術の開発を進めてほしい。
(2021/4/15 05:00)
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