(2021/4/22 05:00)
政労使は最低賃金(最賃)引き上げに向けた中期的な計画を策定し、確実に実行してもらいたい。生産性向上に資する成長戦略の一段の推進に加え、所得に関する税制・社会保険制度を見直す必要もある。
日本商工会議所など中小企業3団体は、最賃に関する初の共同会見を開き、中小企業の窮状を訴えた。新型コロナウイルスの変異株が猛威を振るい、経営の先行きが不透明な中、「最賃は現状を維持すべきだ」と主張した。全国加重平均で早期に時給1000円を目指す政府方針をけん制した形だ。
コロナ禍に見舞われた2020年春闘も、最賃は前年比1円増の902円にとどまっており、前年を踏襲する労使交渉となりそうだ。中小企業の間でも規模や業種などで収益環境は異なるが、中小全体で考えれば事業継続と雇用維持を優先するのはやむを得ない判断といえる。
問題はポストコロナ時代の賃金のあり方だ。中小にデジタル変革(DX)を促す施策を中期的な視点で手厚く講じ、生産性向上をこれまで以上に後押しすることが求められる。中小と大企業の間でくすぶる不公正取引も是正に向けた監視を強め、原材料費などの市況に応じた価格転嫁を円滑化したい。柔軟な働き方改革を推進し、学び直しなどでスキルアップを促せば賃金の底上げにもつながる。
他方、非正規雇用については、しばしば国際的な批判にさらされる外国人労働者の低い賃金を是正する必要があるだろう。外国人の低賃金が日本人労働者の賃下げ圧力につながる可能性を排除したい。
非正規労働者には税制面などでの配慮も求めたい。年収が103万円を超えると所得税が発生し、106万円超だと社会保険加入が義務付けられる“壁”がある。配偶者控除をめぐる壁も複数存在する。あえて壁を越えないように所得を抑える非正規労働者が少なくない。この壁を引き上げる必要がある。
これら施策を政労使が計画的に運用し、賃上げを起点とした消費喚起、企業の収益増と経済の好循環を機能させたい。
(2021/4/22 05:00)
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